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まずいろいろと偉そうなことを抜かす前に、Z Ultraを売り払ってiPhone6 Plusを買ったとき、
「もうAndroidに戻らない」
という宣言を翻した道義的責任の追及は免れないと思うので、ここではっきりと弁明させて頂くものである。
これはBlackberryであってAndroidでは無い。問題にはあたらない。以上だ。
やめろ、石を投げるな、靴を投げるな。私が問題ないと言ったら無いんだ。これはBlackberryだ。Blackberryの端末をBlackberryと解釈して何が悪い、うわははは法律や憲法すら今や解釈次第のご時世に甘いことをほざきおって、ざまあみろこれが新しい判断だ。何も問題など無いのだははははは。


MNPキャリア転がしで稼げなくなって息絶えた皆様いかがお過ごしでしょうか。僕も資金源の一つを断たれるわ実質賃金も上がらんわでもはやiPhoneのような高級機は維持できず、今後順次端末を安上がりに替えていこうと思う所存。おかねがない。

しかし今スマホを選択するのにiPhoneを捨てるということはAndroidを使うということになる。え?なんだって?ウイン…ドー…ズホンテン?…ノ…キア…ルミ…うっ…頭が…なんのことかわからないが古い友人を喪った悲しみのようなものが心に湧いてくるので聞きたくもない。

前述通りAndroidには懲りたのだが、事実上選択肢はAndroidしかない。しかし今どきのAndroidは国内外問わず大手や話題の新メーカーも含めて、同じような形の同じようなスペックのガラスの板きれ。

いまAndroidで一番面白いのはXiaomiあたりに端を発する中国の新興メーカー。Huawei、OPPO、VIVO、Meizu、ZTE、LetV、OnePlus、Varnee、Elephone…ハイエンドなスペックと品質で値段は従来の半額以下。高級機にはスゴイキレイカメラが載ったりDACが載ったりしている。もはやガラパゴスと言うほどの"進化"すら失い、かといって信頼など未だに勝ち得ていない国産メーカーのスマートフォンよりも、既に世界の舞台で火花を散らしている彼らは遙かに信頼の置ける連中である。


しかし、しかしだ。それでも筐体はただのガラス板だ。新興メーカーや海外デバイスにはもっと夢があっても、もっと挑戦があっても良いのではないか。もっとヘンテコ端末が出てきても良いではないか。

ヘンテコ端末と言う点では日本や韓国で局地的な人気のあるガラホ、フューチャーホン型Androidなどはかなり「そそられる」良い線を行っている。ただあれは挑戦や夢と言うよりも『タッチパネルに対応できずフューチャーホンを抱えて死にゆくしかない老人達のために、せめてOSだけでもAndroidにして介護者側の負担も減らそうという介助用品や安楽死施策』のようなヒジョーにうしろ暗い雰囲気が否めないものばかり。「テンキーつきのスマホ」で良かったのに。

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そこで颯爽登場するのが今回の機種Blackberry Privです。拍手。拍手。


おおBlackberry!モバイルデバイス史における、ある輝かしきいち時代の代名詞よ。世界のモバイル史を紐解けば「iPhoneの次くらいに流行ってた」と言って今や誰が信じるであろう。ビジネスパーソン必携アイテムにして一時はアメリカ大統領御用達、一世を風靡した「つぶつぶQWERTYキーボードのついたあの電話」である。

オバマ大統領の輝かしい功績はオバマケアやキューバ国交や広島訪問だけではなくホワイトハウスにおけるスマートデバイスの解禁もその一つと言える。もっとも実際の彼のBlackberryは"ビースト"や"エアフォースワン"同様に、ベースモデルとは似ても似つかない「プレジデントナイズ」を施されたレンガのお化けであったようだが。

Blackberryの歴史はほとんどスマートフォンの歴史に近く、これを説明するとなるとスマートフォン黎明期という白亜紀の恐竜物語に加え、このガラパゴス諸島に位置するケータイ後進国の国策企業共が、スマートデバイスたち、特にBlackberryに対していかなる冷遇施策を採ってきたかの恨み辛みをたっぷりと数メガバイト分のテキストにして読み聞かせなければならなくなるためここでは割愛する。とにかく「ア メリカでiPhoneの前に流行ってたつぶつぶキーボードのスマホ」です。


Blackberryは長らく独自のBlackberryOSを採用してきたが、最新版の10ではAndroidのアプリストアが使えてアプリが(おおむね)動く。「アプリストアの出店側に閑古鳥が鳴く」事態を回避ししたたかに生き残っているのはどっかの10のつく電話OSとは大違いだ。
だが、独自OSは金食い虫、Androidのエコシステムは広がる一方。もう一度BlackberryOSで市場を席巻し覇権を取り戻すなどというのはどう考えても不可能である。ぶっちゃけ何事においても、本来あるべきものならともかく栄光を「取り戻す」とか言い始めたら死亡フラグで誇大妄想だと思っていい。

かくしてBlackberryは「Androidアプリも動くBBOS機」でなく「BBOSっぽいAndroid機」で勝負に出ることにした。のだと思う。
Android機としてはほぼハイエンドと言って差し支えないスペックに、Blackberryの系譜たるセキュリティ性、ビジネスツール、つぶつぶキーボードをスライドで搭載した意欲作、Privの登場である。



国内正規版が10万円で売っているPriv、オークションなどでカード枠換金等由来のバッタ屋を覗いてみるとなんでか5~6万円弱といったところ。売れていないようだ。

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ところで「Priv」は「PrivilegePrivacy」の意を込めた名だそうだが、ゴロの良さからすると「プライヴ」と呼んでしまいたくなるが正式には「プリヴ」であり、かなり詰まった感じの言いにくさがある。ただ海外ユーザーの発音などを聞くとカタカナで書くなら「プリーヴ」のほうが若干近い印象があり、日本語話者的ゴロの良さも許容範囲だと思うので「ぷりーぶ」と呼んではどうか。本音は「ぷらいぶ」のほうが英語的にも「Prime」に似てるし良さそうに思えるのだが。

そんなブラックベリープリーヴの付属品はこんな感じ

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モノ自体はアダプタ、ケーブル、イヤホンと特筆点はなく今時のスマートフォンだ。ただUSB-ACアダプタが少々ラージサイズであるあたりは北米大陸風味だと思う。あとマイク・リモコンつきのイヤホンが割と格好良い。

BBPと略すと併売されているPassportと紛らわしいためいい略称がない。というかPrivでいいのだが。

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筐体はこんなかんじ

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目を引く両サイドラウンドの有機ELディスプレイ。解像度は2560x1440のWQHD。現行機ではハイエンドであり、有機ELのコントラストの高さも相まって大変な美しさ。

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ラウンドエッジな液晶を目の敵にしている一部ユーザー勢力が存在するようだが、個人的には別段持ちにくさや見にくさは感じない。GalaxyEdgeなどはたしかに曲面比率が大きく演出過多なきらいがないとは言えなくもないが、Privのカーブはアクセント程度に留まっていて、ゴリゴリに液晶の端から端までテキストを並べても文字がたわんで読みにくいというレベルでは無く、また持ちにくい、誤タッチが起こるということもなかった。逆に言うと「側面から何か情報を得る」という使い方が出来るわけでもなく、カッコ以外に特に用途はない。

ラウンドエッジ感を強調する、端部の充電プログレスバーもカッコはいいのだが、例えば伏せ置きして横から見えるほどラウンドしているわけでもないため、ほぼハッタリである。

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エッジぽいといえば一つだけ、「生産性タブ」という機械翻訳な名称の機能がある。常に前面に表示されており、引っ張り出すとスケジュールやタスクを確認できる。使いこなせばなかなか便利だろう。


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サイド
Androidには珍しく(そしてBlackberryでは一般的な)ミュートボタンなるキーが中央に配置されている。とはいえAndroidにおいてはイマイチ動作がよくわからない。いやそりゃ押せばぱっと音量がゼロになってミュートにはなるけど。アラームを止めるならロックボタンでいいし、何に使うの感がある。

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反対サイドはロックボタン。iPhoneとは逆なので少々戸惑う。
プラスチッキーな筐体と比べるとこれらは一応メタル素材らしいボタンだが、面取りが甘くカドが立っているため見た目の調和を欠く。指が痛いとかそういうところまでは行かないが、とってつけたようなかんじになってしまっている。


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上部
nanoSIMとmicroSDのトレイ。iPhoneが完全に業界全てのスタンダードを変えてしまった数多くの事柄で、最も地味なものの一つがカードトレイにおける例の抜き出し方法だろう。細いピンを刺し込んで抜き出す例のシステム。
ここで世界市場を見据えて抜け目なくデュアルSIMにしておくという選択ができなかったのがBlackBerry凋落の理由の一端のような気がする。せやろか。

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下部
microUSBなのはありがたくもありCでないことが残念でもあり。
イヤホンは最近のスマートフォンのセオリー通りマイク・スイッチ付き4極穴。案の定iPhone向けのボリュームキーは使えない。
スピーカー&マイク部分は大柄で音質に自信がありそうなデザインだが、特に宣伝で触れられているわけでもない。フロント向きなのがちょっとうれしいが普通のモノラルスピーカーであり、スマホスピーカーなりの音質。スピーカーグリルがちょうどよく滑り止めになるため気兼ねなくひっつかめるグリップ部分だと思う。

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背面とカメラ
ラバーコートなプラスチック筐体。今どき筐体背面をこれで包む携帯もそうはあるまい。カーボン調の仕上げといい質感は決して悪くはないが「スベりにくい」と言うよりは「ペタつく」一歩手前というレベル。

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カメラはそれなりに大型で、置くとiPhone6の「カメラ出っ張りゲート」問題がいかにバカバカしい問題かを見せつけるレベルで傾く。裸で置く想定ではないのかも知れないがそれにしたっておまえこれはどうなのという勢いでカメラベゼルを全力で床面にこすることになる。
レンズはシュナイダー・クロイツナッハ”認定”レンズ。ライカもカールツァイスもケータイカメラ向けに同じようなブランド商売をやっているが、シュナイダーもやっているというのは初耳だった。少なくとも国内流通製品では見たことないよね。リンホフとかローライとかもどこかでやっているんだろうか。

カメラ性能はたいそうよろしい。1080/60p動画も撮れるし読み込み速度も標準的だ。ただこの手のブランドレンズを謳う極小カメラによくあるが、レンズ性能の誇示のためか必要以上にシャープに仕上げ、色味や描画の情緒が乏しくなるきらいがあると思う。Privも例外でなくそういう傾向がある感じ。
ただケチの付け所はそれくらいで、さすがに2015年の1800万画素のカメラともなると「ケータイの写メ(死語)」の画質として文句のつけようなどどこにもない。


さて、本題に入ろうか

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ゴゴゴゴ


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シャコッ★

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今気づいてしまった。俺は、「携帯を縦スライドしてキーを出す」なる行為を、10年近くしてこなかった。気づいてしまった。ガラケーのパカパカでもなくW-ZERO-3の横スライドでもなく。縦スライドでキーが出て来た。
iPhoneユーザーになる前、遠く忘れかけた記憶の彼方にこれと同じ感覚を俺は知っている。そうだこれは、これはノキアの、N95のスライド…!(涙が頬を伝う)

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ぶっちゃけそれほどの剛性があるわけでも無いのだが、「自分のケータイを開いた(物理)」という行為をしたのが本当に久しぶりであったため謎の感動が押し寄せてきた。
おお。おお。僕らがケータイを「開か」なくなって幾星霜の年月が流れただろうか。ケータイという存在が、物言わぬガラスと金属の板となる前、あのパカパカシャコシャコと喧しい威嚇音とともに、何に使うのか不明な肥大化した器官をずらしてみたり回してみたりしながら、この大地を悠然と闊歩していた有史遥か以前の原始の生態系よ、その記憶と感動が胸に去来して思わず涙である。

面白い事にほぼ常にフルキーボード搭載を旨とするBlackberry史において、こうしてスライドする端末は、Torchなど一部があるだけで少数派である。BlackberryとAndroidの邂逅は、現在国外端末まで含めても異端である「フルキーを持つAndroidスマートフォン」にして、BlackberryでもAndroidでも異端たる「スライド端末」、というアイデンティティクライシス気味な異端児を生み出したわけだ。異端と言えば、iPhoneによるタッチパネル革命が業界を席巻しはじめたときに生み出された「物理的にボタンのように沈む液晶」なる脳筋なアイテムを搭載したStormなどのほうがよほど異端かも知れないが。

画面が可動することでハンドリングは少々繊細さが要る。具体的には、つまんで持ち上げようとしたら画面がスライドして危うく落としそうになったなど。もう我々人類は指先の芯まで、ガラスと金属の板一枚の形態に慣れてしまっているのか。まあ回ったり横に開いたりする変態オープンケータイ全盛期にNOKIAのストレートを使っていた時から似たようなことは思っていたが。

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キーはBlackberryにしては「ユル」さが目立つ。クリック感も少々腑抜けな感じだ。

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キーサイズは小さく見えるが、実際のところ筐体がiPhonePlusなどと同様、中小ファブレットサイズ(5.5inch)で大きめなため写真で見るよりキーは大きく、形状も良いため意外となんとかなる。
入力が片手でどうにかなるかというと全くならない。ただし、いよいよ片手持ちの危機に晒されているファブレット界にあって、キーボード部分をむんずと掴むことにより独特の安定感あるハンドリングが可能。独特のと言っては見たもののフューチャーフォン時代のスライド端末ならば皆このような持ち方をしていたのだ。圧倒的にサイズが肥大化したことを除けば、単なる先祖返りだ。

キーボードにはタッチセンサーが内蔵されており、キーボード上で指をフリックすることでスクロール等が出来る。最近のBlackberry Passportなどにも搭載されている機構だが、これが実に良い。Blackberryのもう一つの特徴たる極小トラックボールを思わせる操作性。本来はこれで文字入力時のカーソル移動が可能なのだが…

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さてPrivと言う端末のハイライトは間違いなくこのキーボードであり、同時に個性もクセも欠点もすべてこのキーボード、厳密に言えばキーボード入力を受けるIMEにある。

結論から言うとPrivのキーボードは、「色々と惜しい」という評価となる。
他レビューでもさんざ言われていることだが、どうやら人間、明確な欠点への不満や抜群の利点への賛美より、一番印象に残るのが「惜しい」という感情であるらしい。

キーボードハード自体は剛性のユルさなどはあるが最高である。問題は日本語。つい最近追加された純正日本語入力はとにもかくにもクセとアタマのヨワさが目立つ相当な難物で、かといってGoogle日本語入力をはじめATOKだのSimejiだのに切り替えるとタッチセンサーが使えない。というかカーソルキーがない。Google日本語は日本語と英語の切り替えもいちいち画面タップでキーボードを切り替えなければならない。ATOKやWnn Keyboard Lab やOpenWnn、Simejiなどはシフトキーとスペースで英語と日本語を切り替えられる。しかしALTキーの入力が残ったまま何らかの記号や機能が暴発したり、ALT+Vキーで数字の9を入力するはずがCtrl+Vと認識してしまって以前どっかでコピーしたクリップボードの内容が入力すべき数字列に突き刺さるなど、どのIMEも一長一短。
英語入力なら問題ないのかと言えば、タッチセンサーでカーソルが使えないのは英語の非純正IMEでもおそらく同じで、キーも「BB仕様」なので、Blackberryユーザー以外には取っつきにくいのでは無いかと想像させる。

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ここらへんで薄々気付いてきたのが「根本的にキー数が足りてないのではないか」という事実。Androidのハードキー仕様はあくまでPC用キーボードのそれを前提としていて、Blackberryの独特のキーボード仕様はそもそも合わないのである。カーソルや数字キーが純正IMEでしか使えない(事がある)機能で代替されているのは問題だし、せめてもう一つ修飾キー、CtrlかFnがあったら良かった。

結局今のところATOKをメインに使っているが、キーボードの快適さよりも「フリック入力って意外と便利でスゲエんだな」という印象が強くなってしまって本末転倒感がある。ATOKのフリックには左右カーソルキーがついているのでなおさら文字入力が捗り、キーボードを開く頻度がどんどん減っていく。

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まあ文字入力だけがキーボードではない。Privのアルファベットキーには任意のアプリ起動を割り当てられ、ホーム画面でキーを押すとキーに設定したアプリが立ち上がる機能を搭載している。素晴らしい!
素晴らしいか?

この機能、ホーム画面限定の機能なのである。ホーム画面は何をするところかと言えばアプリを選ぶところである。キーを押すのと画面のアイコンをタップすることのどちらが楽だろうか。キーにはアルファベットしか書いていないが画面にはなんとご丁寧にアプリ名とアイコンがついているというのに。

例えば、例えばだ。WindowsでWinキーとEのコンビネーションでエクスプローラが立ち上がるように、「押すとホーム画面に戻るBBキー」があって、アルファベットとのコンビネーションで、どの画面からでも任意のアプリを立ち上げられたりしたら。これはもうハードキーの面目躍如、相当強力なランチャー機能と言えるが、Ctrlキーショートカットすら数字入力とせめぎ合っているほどキーの足りないPrivにそんなものはない。
この仕様でも唯一最高に安心感をもたらしてくれるのは、エンターキーとスペースキーである。とくにリモートでPCを操作しているときなど、クリックやダブルクリックの代わりにエンターキーやスペースキーを押すのは実に理に適っている。それを画面を覆い隠すように出てくるソフトキーを使わずに実現できるのは快適と言わずしてなんと言おうか。シフトやCtrlがあればもっと良かったけどな!


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キーボードには違いないので文字入力でない入力を認識するAndroidアプリも多く、例えばMinecraft PEなどのゲームではWで前進するしスペースを押すとジャンプする。

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まあ言うまでもなく画面が横向き固定のゲームではキーボードは90°回転した状態であり、操作性向上には全く寄与しない。
縦向きで出来るゲームならちょっとうれしい局面があるかもしれないが、果たしてキーボードFPS操作が可能で縦画面という謎のゲームが存在するのだろうか。存在したとしても結局マウスがないのでエイムはタッチパネルという「FPS操作」モドキの様相なのだが

というかいっそのことキーボードのタッチセンサーはそのままノートPCのタッチパッドみたいな汎用マウス入力としてぶち込んでくれて良いのよ?という気にすらなってくる。ハード的にタップが認識できたらクリックもできる。そうするとIME変えると潰されるカーソルやら何やらよりよほど使いやすくないだろうか。ゲームもちょっと良い感じに操作できそう。

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このていたらくなので結局のところ、大部分がキーを閉じたままフリックでスマホ運用と言うことになる。もったいないどころの話ではない。QWERTY入力の感触自体はうっとりするほどステキな体験なので折に触れて長文入力に使っていきたいのだが、うっかりすればフリックに効率で負ける。皆が惜しい惜しいと喚く気持ちがよくわかるというものだ。

というより、日本語入力に限ればフリックというものがもはや完全にフルキーを超えているというか、上記に書いたような修飾キーやショートカットの充実を実現した端末が登場したとしても、日本語文字入力自体は全部フリックで済ませるだろうという衝撃的な感想を持ってしまったのだ。これはいけない。「Blackberryオワタ」以外に何の結論も得られないでは無いか。

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キーボードを中心に見てきたが、あとはただの「よくあるAndroid端末」なので良くも悪くも大して語るべきところは無い。相変わらずPowerampをはじめとする音楽環境はiOSと比べて基礎の基礎がまるでなってなくて使いにくく汚らしいUIだし、何をするにもiOSよりはディープな事が出来るがiOSよりとっちらかってウザいし。root化とかもはや何するんですかね。出来るのかどうかすら知りませんけど。

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あまりポジティブな評価が出来なかったPrivである。実際これ、購入後、4ヶ月ほど使ってみた段階の感想で、レビューを書く気にならなかったがためのもの。

いややはりハードだけ取って付けても良いことは何もないのだと、ソフト・OS・UIが万全に体制を整えてこそのハードウェアなのだと、ガラケーの凋落とiPhoneの勃興があれだけ僕らに教えてくれたのに、それをまだわかっていなかったのか。面目ない。

「キーボードを活用できるスマホ」の道は潰えたわけではないと思うのだが、現状ではハードソフト両面からの大幅なブラッシュアップ、というか完全な意識の転換が必要であるようだ。キーボードは載せるが、文字入力がメインでなくても良いというスタイル。今後Blackberryが到達できるかどうかといえば無理やろなあ。中国とか台湾の勢いのあるメーカーなら能力的にはできそうだが、生憎とあちらの言語圏では日本語よりなおQWERTYキーボード依存度は低く、手書き入力が正義であってPCすら手書きが人気という説もあるとか。インドネシアなどもフルキー大国だが、スマートフォン的な使い方よりよりフューチャーフォンのメッセージングがメインだと思う。

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そもそもQWERTY依存の英語圏ですら、少なくともモバイル環境では、QWERTYハードキー自体が「もういらない、使い古された、終わった市場」なのだ。「Sidekickの復活」みたいなのが爆死確定としても流れてこない時点で気付くべきだった。Blackberryの価値はキーボード以外にもそのメッセージングインフラやセキュリティ性でもあって、それこそiPhoneのイヤホンジャックのように切り捨てて新しさを模索しても良いくらいのものだったのだ。向こうで猛威を振るうのはフリックでなく何らかのスマート入力方式だろうが、いつまで経ってもiPhone用フルキーボードケースがバカ売れにならないのもそういうことだ。
われわれ、アジアのガラパゴスでテンキーを連打して文字を打っていたイグアナどもにとっては、プチプチフルキーボードは異国情緒漂う憧れの新要素だが、向こうでは既に、アフターiPhone時代に対応できなかったジジイしか使っていない、オワコンレトロ要素なのだ。

つまり結局のところ、Privもまた「タッチパネルに対応できずBlackberryを抱えて死にゆくしかない老人達のために、せめてOSだけでもAndroidにして介護者側の負担も減らそうという介助用品や安楽死施策」でしかないということだった。おお、気づきたくなかった事に、気づいてしまったのか。結局フューチャーフォン型スマホと同じ位置づけか。ハハハ、俺は実にバカだった。保守封建的懐古主義の産物に何が夢と挑戦だというのだ。すべてわしら老兵の残留思念に過ぎなかったということじゃよ…そしてとうとう年貢の納時…なに…元より居てはならない時代まで居てしまったおいぼれの…一時の夢よ…悲しむことはない…


BlackBerryが端末製造から撤退、ソフトウェアに注力へ
http://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1022533.html

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光とともに昇天していくBlackberry Privをヤフオクのかなたに見送りながら思いをはせる。(まだ売ってません)
僕らも今後しばらくはフリック入力とともに生きていくのだろう。そして、いつかは何もかもが想像もつかないほど新しくなった”何か”に、フリック入力のためのタッチパネルだけが不格好に光っている、そんな異形のデバイスを抱えながら、老後を過ごすのだろう。
願わくばまだその時、新たな若者たちのための”何か”を高圧的に貶さないだけの理性と誇りを保っていられますように。

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世代は巡り時代は変わる。今ここに、少なくとも自分の中では、フルQWERTYキーボードモバイルの時代は確かに終焉を迎えたのであった。iPhone7買うわ。完。





わりと酷評したものの、キーボードの惜しさ以外は何らの不満点も無い優秀なハイスペック端末なので、我こそはと思う変態モバイラーの方は是非所有してみていただきたい。
Blackberryの端末製造撤退と、同社のAndroid端末第二弾のDTEK50がごく普通のスマホというかALKATELのOEMであるところを見ると、PRIVが史上最後のBlackberry純正端末であり、下手をすれば最後のフルキーボード搭載Androidスマートフォンということになっても不思議はないだろう。将来のモバイル史うんちく語り的に見ても大変に重要な端末となるはずだ。