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IYH等とは言うがたいていの場合IYHerは買ったものの見通しが後々まで付いているものだ。このバとカの二文字以外に単語を付与するのもバカバカし い莫迦野郎の馬鹿げたバカアイテムをばかに気前よくIYHしたのも、半分くらいはリセールバリューのことも考えて、数年は値段落ちはしないだろうというみ みっちい確信に基づいてはいる。もう半分はわかんない。よくわかんない。皆さんここにバカがいます。

昨今のPCファン界隈、特にクリエ イティブ界隈や、国産PC動向に聡い者や、VAIOとかいうソニーに捨てられた厄介者の話が大好きな変態にとっては一切説明不要の超巨大彗星級の新製品、 VAIO Z Canvasがあろうことか我が家に墜落して恐竜が絶滅した。一体どのような手塚ゾーンの介入があったかは定かではないが、「ソニーストア特典として24 回払いまで金利1%」という謎の一文の書かれたHTMLファイルの化石が同年代の地層から出土しており、消化管の痕跡からボーナスも併用していたのではな いかと推測されている。
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●VAIO Z Canvasとは


説明不要と言いながら説明していくと、SONYのPCブランドとして誕生したVAIOが、いやこれでは遡りすぎるからもうちょっと手前のPrototype Tabletのところから説明していきたいがどうしても喋りたいようなので超特急でここから説明していくと、誰が買うんだこんなモンっていう鋭角過ぎるド変態PCで有名だったが、凋落著しい国産PC市場でとうとうSONYから切られて独立したのがVAIOである。

手始めに自分にブランド力があるという謎の思い込みから、ロゴだけVAIOで中身は安物量産スマホのVAIO Phoneを出して集金を試みたためユーザーや批評家から半殺しにされるという華々しい門出を飾ったVAIOだったが、一方で「今後はUとかPとかXみたいな鋭角ド変態製品を好きなだけ出して良い。おかわりもいいぞ」という素朴な事実にはしゃいだのか「VAIO Prototype Tablet PC」計画を立ち上げた。

同計画は「お絵かきガチ勢が泣いて喜ぶタブレット試しに組んでみた」といって実際はSurface Pro3とかマジで雑魚だからと言いたいがために頭のネジのすっ飛んだハイスペックタブレットを作るという計画で、クレイジーパソコンヤッターなファン達と、Cintiqのインチ数で決定される厳格なカーストに縛られたお絵かき道具オタガチ勢の心臓を握りつぶして洗脳支配下に置いた。彼らの意見を吸い上げて開発が進められていたものが、この度製品化される運びになりVAIO Z Canvasが誕生した次第。

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梱包の不織布ですらなにやら高級感がある素材。

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とはいえ箱はダンボール色そのもので、布が張ってあったりはしない

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付属品。

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VAIO布

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●スペック

語弊と言いがかりしかない説明に続いてスペックを見ると。


●CPU
Core™ i7-4770HQ 2.20GHz
CPUに関しては上級i7ワングレードという居丈高な仕様で、まさかのH型番つまりモバイル向け通常電圧版。最大クロックは3.4GHzを数え、コア数は堂々の4コア8スレッド。17インチノートやMacbookProなどモバイルワークステーション級に積まれるような重量級の一石だ。超低電圧のU版が高級メインストリーム級ノートにすら使われる現代(同社のVAIO ZノートPCもU)で、タブレットにこれを載せようという蛮勇はどうだ。まるでアメリカンマキシマムカーですらダウンサイズ直4ターボとか積む現代に突如としてコンパクトカーにV8エンジンを長くなるからやめよう。
4770HQはHaswell、つまり現行Broadwellの一世代前だが、これはBroadwellのH型番i7が間に合わなかったため。最近のハイエンドCPUはもっぱら消費電力とGPUの改良に主眼が置かれるため、最新のCPUにパワー負けすることは無いと思う。
TDPは実に47Wを放出するこのヘビーCPUを積むとなれば真っ先に冷却対策が気になるところだが、そこはこの手の薄型小型偏執狂でPC作りをやってきた安曇野の手管、Z-engineと称する芸術的なマザーのパーツ配置とヒートパイプ設計と大型3連ファンという万全の冷却体制を整えており、クロックダウンは施していないどころかベンチ程度ではサーマルスロットリングすら発生しないとのこと。17インチ大型ノートですら一筋縄でいかないことを熱量保存則とはなんだったのかレベルの神業で実現した。

●GPU
Iris Pro Graphics 5200(CPUオンボード)
4770HQに積まれているのがこれ。悪名高いIntelオンボード、なのも今は昔なのか。ベンチだけならモバイルGeforceで言うところのGT以上GTX未満らしいが話半分に捉えておく。本気でIntelグラボを信用していない人間のコメントである。ともかくSurface Pro3など低電圧版には真似の出来ない一丁前のGPUパワーを発揮する。

●メモリ
DDR3 8GB、16GB 交換は不可。

●ストレージ 第二世代ハイスピードSSD 512GB~1TB、SATA 256GB
今時1TB SSD程度で驚きはしないが、PCIe x4接続の爆速SSDなのはすごい。シーケンシャルリードは2400MB/sに達し、なんだかもう一昔前ならRAMで通用する速度。
ただし256GBを選ぶとSATAで繋がり、今回買ったモデルはこれ。SSD性能は凡庸であるが、世の中まだこれで十分だと思う。

●液晶ディスプレイ

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12.3型3:2(2560×1704) IPS AdobeRGB比95% タッチ・デジタイザ
よだれが出て来た。Surface Pro3で閃光の如く市場に現れ絶賛された3:2液晶であり、解像度はWQHDを突破。IPSはもちろんのことAdobeRGB95%でカラマネ対応、これが液晶単体でも10万くらいなら買われるであろうブリリアントすぎる液晶だ。

目が覚めるような美しさ。キャリブレーション装置などを使って評価したわけでは無いので踏み込んだことは言えないが、解像度やスペックや色味以前に描画が好ましい。こういうとこは液晶技術屋でなくテレビ屋たるソニーのDNAですよ。

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それでも言うなら色自体こってり系なのは疑いなく、多少赤が強い気がする。逆にSurfaceやU2711が青すぎるのか?。そろそろキャリブレータくらい買わないといけないと思う。

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また、昨今の上質なIPSにしては珍しいくらい角度による色変化がある。これは電力効率の高い集光バックライトを採用したためとか。安物TN液晶とまでは言わないが、どの角度からみても印刷物かと見紛うSurface Pro3と比べると、かなり「液晶っぽい色変化」を味わうことになる。


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薄型を追求したエッジライトのため、光漏れも相応にある。


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正面から見ると本当にきれい

残念ながら「フツーに使う」場合は100%Surface Pro 3の液晶の圧勝だと思う。AdobeRGBとかとほど遠い世界の出来事です。まあそういう人はZ Canvas買わないはずだが。

液晶ガラスは削り出しの6面強化ガラスで、耐久性も抜群とのこと。9Hとかガラスにそぐわない意味不明な尺度は持ち出してこない。最近のタブレットのガラスのような若干のぺなぺな感は皆無、それでいてダイレクトボンディングのおかげで液晶素子との距離は紙一枚のようにすら感じる

2,480円で出荷時より保護フィルムをつけられる。フィルム自体は典型的なハーフノングレア系フィルムに過ぎない。ペンの書き味や指滑りは良好なのだが、かなり指紋が目立つ。
せっかくならもうちょっと良いフィルムを付けたいが、純正にしろ社外にしろ専用ガラス保護フィルムなど果たして登場するのだろうか?


●端子

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ステレオミニ端子(ヘッドセット対応)
USB3.0 x2
SDメモリーカード(UHS-II対応)
Mini DisplayPort
HDMI出力
1000BASE-T
裏側にフロントカメラ(92 万画素)、リアカメラ(799 万画素)

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有線LANがついてるのがプロっぽいが、この折り畳み式コネクタ使いたかっただけだろ感もある。初登場はVAIO Xだったろうか。チップがカニさん(Realtek)なあたりもとってつけ感。
USBが二基ついているのは素晴らしい。MiniDPは4K出力もできる。




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SDカードスロットはフルサイズSDXCが挿入可能でUHS-IIの高速対応。
UHS-IIのカードなど今はまだ超高級品なのでその爆速っぷりを味わうのは当分先になるだろうが、UHS-IでもmicroSDカードよりはずっと速いし、128GBなども手頃になってきた。
スロット機構に言及しているレビューを見かけないが、押し込んでかちりとやるノック式の着脱機構を備え、頭が飛び出ない、完全収納可能なタイプのスロット。ただし完全にツライチかというと微妙に出っ張るのはもうちょっとどうにかして欲しかった。頻繁に抜き差しする人にはツライチを嫌がる人も多いが、モバイルで刺さったまま持ち運ぶ可能性を考えるとツライチはありがたい。
驚くべきことに…いいですか驚くべきことにですよ?なんと、まさかの、「メモリースティック対応ではない」純粋のSDスロットです!信じられますか!VAIOが!ソニーのVAIOがですよ!?(どんだけだよ)
実際は2013年頃からソニー製品でもMSスロットにこだわりはなかったりする。時代である。



●充電

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19.5V 3.3A  65W 外径6.5mm内径4.4mmセンタープラス。
VJ8AC19V77と記載があるが、SONY製VGP-AC19V77と同等らしい。VAIO FitやZと同じものであり、容量を間違わなければ社外品も豊富で、互換品やバルク品が3,000円程度とかなり安価に販売されている。
しかし65Wでこのマシンが動くというのはすごいが、実際に使用してみるとやはり無理があるのか、本体の神業レベルの熱処理効率に反し、このアダプタは本体に負荷をかけていると素手で持てるかどうかという「ちょっとアカンやつ」レベルで発熱する。Z-Engineとやらはアダプタには搭載していないらしい。
単純に小型化しすぎて容量ギリギリで過電流なのか、初期不良や不具合なのかはまだわからないが注意が必要かも知れない。
また、SurfaceのようにアダプタにUSB充電ポートがついているといったノートPCアダプタ史に残る偉大な発明も施されていない。VAIO Proとかには付いていたらしいのだが。一刻も早く全てのアダプタに搭載すべきだというのに。


●無線
IEEE 802.11a/b/g/n/ac 、Bluetooth 4.0

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デバイスマネージャーから見たところ無線はIntelのよう。当然のようにacまで対応。
Surfaceに比べてアンテナ効率は多少良く感じる。


●筐体、ファン、ペン、キーボードなど


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印象としてはかなり薄いのだが、Surfaceとか見てしまってるとやや粗大。

基本的にはクセのないタブレットPCそのものの姿である。

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Surfaceのガチムチマグネシウムボディと比べると、フツーのアルミ筐体っぽい。ただ、表面処理について店頭で見たものはかなり荒っぽいというかFiioなどの中国製格安アルミ製品みたいなイメージを感じていたのに比べ、届いたのはかなりきっちりとサンドブラストされていてSurfaceに迫る。勘違いか、展示品ゆえか。

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ボディ剛性はSurface Pro3よりも上に感じた。いや決してSurfaceがヤワということはないのだが、超高次元な勝負においてわずかにZ Canvasのほうに底知れぬ強靭さを感じる。まあじつのところボディが分厚い分である。

●熱量・ファン音量

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排気口は上部に集中している。熱風はそれなりに出るものの、ファンの騒音は「無音一歩手前」ほど。
Surface Pro 3のファンも信じられないほど静かだったが、「サー」と甲高いホワイトノイズのような音を発して回るため時々耳につくのだ。こちらの静けさはファンの音質がかなり低く唸っていることもあり、ほぼ無音同然である。

熱自体はたしかにCPU付近は冷え冷えとはいかないし、タブレットである以上指を滑らしていると人肌程度にはぬくまるものの、手を押し付けていて不快に感じるほどの熱量は持たなかった。クリスタやブラウジング程度なら発熱を意識することすらないのではないだろうか。
CPUでも触れたがこのZ-Engineなる冷却機構、実際は既存のヒートシンクとファンの組み合わせにすぎないとはいえ本当に何らかの冷却素子でも搭載しているのではないのかと思えるほどに発熱に強い。さきほどけなした集光バックライトも、おそらく低発熱には寄与しているはず。


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右上に電源ボタン。LEDインジケータは何故か少しだけ出っ張る。
Instant Goが使われていないため、スリープ復帰はこのボタンを押さなければならず、BIOS起動画面を経由する。
ここまでノートPC寄りのタブレットであっても音量キーがついているのがなんかもう律儀の領域


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ウインドウズキーはいつものとおりタッチ式だが、感度が著しく悪い。押下するかのようにぐいっと押しつけて、たまーに反応するという感じ。フィードバックの振動が無いのも一因だろう。


●スタンド

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このスタンドは担当者の力作だそうだ。機構自体はとてもシンプルであろうことが想像できる。

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ひどく固いラッチを開けると、そのままバネの力でぱこーんと全開する。バネの反発力のみで筐体を支えているイメージ。
ところでそういうシールマジでやめて。


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シンプル原始的とはいえ、その使用感はとても素晴らしい。倒す、戻すの操作が、スムーズかつ最低限の力で行うことができ、どの角度であっても思ったところでぴたりと止まる。一方で筐体を寝かせてペンを走らせるような局面では、筆圧だけでは全くびくともしないほどきっちりと保持される。
いったいいかなる魔法によって実現しているのか。エルゴトロンのモニターアームのような、絶妙なセッティングの妙による快感に近い操作感。これは確かに力作と言うに恥じない。

話によると開発にあたって意見をもらった名だたるクリエイターの皆さんはAdobeRGB95%の2560x1704という夢の液晶を説明しても、こちらのスタンドに触れて感心しているほうが長かったとか。

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Surface Pro3と比較すると、かなり垂直な角度まで立たせることができる。Surfaceの数少ない不満の一つが、寝かせる角度より立たせる角度の自由度の低さだったと今更気づいた。
Surfaceと違って、片手で自在に可変できるのもいい。ただし開閉は結構な力を要する。

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開き方によっては縦に立てられないかと思ったが、構造上スタンドは設置していなければバネで全開になるため、縦置きは不可能。片手で把持するときにハンドルとして利用できそうな気がしたが、別段持ちやすくは無かった。取っ手として強度や剛性自体は問題ないものの、やはりバネで勝手に全開するため危なっかしい。

スタンドにはiMacのようなゴム足が付いている。また本体も直接地面と触れないよう、背高めのゴム足が設置。しかしこれは結局気休めで、ハードに使えば筐体はスタンドの接地面に近いところからガンガンすり減っていくと思われる。


●デジタイザー(N-trig)

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ワ コムでないならハイ解散という向きも多かろうが、最近のN-trigは侮れない。ブレなどのチューニングの徹底はもちろん、特筆すべきは仮想とは言え 1024段階筆圧を実現し、なおかつ本体のボタン一発でタッチパネルを無効化できる。N-trigの方式とダイレクトボンディングによる画面との近さが心 地よい。

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Surface Pro3のデジタイザには尻にボタンがついていてOneNote等を一発起動できてメモ用途には無敵だったが、それ以外でもペンを使いまくりたい勢にはホルダーから外すときなど意図せずOneNoteが起動したりしてちょっと邪魔であった。
Z Canvasのデジタイザは尻ボタンが無い。ゴムグリップの感触や、誤タッチの心配がない書き味はまさに液タブの感動そのもの。ペンの質感もSurfaceに劣らない。

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ゴムグリップはワコムなどよりは食いつきが良い感じ。
ペンタブのサイドボタンは個人的に苦手だが、ワコムのシーソースイッチとこちらならば引っかからない分こっちのほうが好きかも。

ホバーカーソルの追従性については、Pro3と同程度。この点はSurface3でやけに改善されていて、使っていて気持ちよいのだがそれには及ばない。

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ペン先は高摩擦(白)ペン先がデフォルトで付いており、替え芯で低摩擦(黒)ペン先が同梱される。

高摩擦ペン先は、Intuosのフェルト芯よろしく紙に鉛筆をこすりつけるような書き心地…と言いたいところだが、少なくとも純正保護フィルムとは相性最悪だ。ビニールのテーブルクロスに消しゴムをかけるような、怖気の走る滑り感覚と不快なゴムブレーキ感溢れる摩擦になる。角度と表面処理の微妙な違いに翻弄され、するりと滑る時とそうでない時がありフラストレーションが溜まる。

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黒い低摩擦(とはいえおそらくはこっちが普通の芯)ペン先だと、保護フィルムの上でもスムーズにペンが走る。多少滑りが良すぎるきらいはあるが、適度な摩擦とクセのない書き味はゴムとビニールのハーモニーよりは数万倍くらいマシだ。

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ペンホルダーはただのプラスチックをはめ込みペンを差し込むだけ。Surfaceのシール式よりはマシとは言え、この業界はペンホルダーに凝ってはならない不文律でもあるのだろうか。

と はいえ使い勝手は悪い。むしろシールのほうがマシだったのでは無いかというくらいパッとしない。まず鞄やケースに出し入れすると簡単に外れる。また縦持ちでペン を使っているときには概ねホルダーが胸に刺さる。LANポートなんかよりペンホルダーをステキ機構で展開式にしてほしかったものだ。一応弁護しておくと、 Surfaceと違ってゴムグリップがあるため太く滑りが悪いので、あのようなホルダーが採用できないのです。

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ホルダー以外にも、ペンのクリップ部分を直接刺してマグネットで固定する機能もこっそりついている。これがもうちょっと強力かつロック付きなら済んだ話じゃあ無いのかなと。キーボード側に付いてくれてても良かったし。

お絵かきガチ勢では無いため滅多なことは言えないが、N-trigの性能は必要十分どころか従来の液タブユーザーでない人にはこっちのほうが上ではないかとすら思った。
ガラスによる視差はワコムより遙かに小さく、外縁部でのズレや全体のブレなども恐ろしく小さい。
ただし、Cintiq Conpanion2は「完全にIntuosでありCintiqそのもの」の使い心地である(当たり前だ)のに対し、こちらはあくまで「かなりゴキゲン(死語)な液タブ」である。この違い、ちょっと重要。



●着脱式キーボードカバー(無線)

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純正品にして無線のキーボード付きカバー。無線は「2.4GHz帯」とのことでBluetoothではなく他機とのペアリングは出来ない。あとだからこういう刻印無神経に見せびらかすのいいかげんやめてってば。
Surfaceの布のタイプカバーはキーボード&カバーとしての不満はないものの、装着しないと使用できないのは意外なネックだった。タブレットの場合ショートカット操作・ごろ寝操作などもあるためキーボードは局面によっては本体から離れていてほしいし、かつそこで動作もして欲しいわけです。

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マグネット吸着する。本体にくっつけておくと自動的に充電されるのもステキだ。ただ後ろに畳んでおけたSurfaceと違い、タブレット使用スタイルの際に取り外したキーボードをどこに置いたらいいのかはちょっとした問題点か。マグネットの強さもそれなりで、振り回しても外れて落ちるようなことは無いが、近づけると勝手にバチッと定位置にハマってくれると言うほどの強さは無い。

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素直な配列と、薄さに準じたあるいはそれよりも多少はストロークが長い良好なタイプ感。キースイッチ自体は申し分ないが、筐体については金属のシールドがあるためSurfaceのタイプカバーよりましかと思えばさにあらず、剛性自体はさほど無くぺなぺなである。床にべた置きして使えばあまり意識する必要はないが、今度は角度が欲しくなる。本気の文字打ちは別のキーボードをつないでもいいかも。

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Z CanvasはPrototype時に黒かった筐体を「汚れが目立つ」という理由で銀色にしたそうだが、その殊勝な心がけは外側のシェルだけで力尽きたらしく、パームレストは黒い上に最も指脂汚れの目立つラバー風塗装。触れる度に盛大に指紋が残り、さらにこれを液晶面に当ててカバーするのだから少々うんざりする。そのシルバーも本体同様、傷つきに悩まされそうな質感。Surfaceのようにカーボンシールでも貼ろうか。


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タッチパッドというものもなかなか改善されない代用品。なにやら二本指の反応が恐ろしく鈍く、本当に緊急時にしか使いたく無い。
このキーボードはハードスイッチでパッドをオフにできるという得難い特徴を持っている。無意識にお絵かき中にタッチパッドに触れてしまっていて、誤作動でインクがボタ落ちしたのをデジタイザのチューニングの問題と勘違いした人もいたようだが、最初からオフ安定である。
横の端子はカバー装着時に本体と接続して充電するためのもの。タブレットにはBTモバイルキーボードアクセサリが多数登場しているが、これはアクセサリの充電問題を解消したとすらいえる、純正なればこその素晴らしく気の利いたギミックだと思う。いちおうUSB端子もついているので別途充電することもできるのが憎い。


●寸法重量
本体: 約 幅301.0 mm × 高さ13.6 mm × 奥行213.0 mm 約1.21kg
キーボード: 約 幅301.0 mm × 高さ4.4 mm × 奥行213.0 mm約0.34kg

ここまでの怒涛の高性能を詰め込んでA4サイズの13.6mm厚。約1.2kg。想像を絶する薄さ軽さである。
が、やはりこれでは少々タブレットとしてぶん回すには少し質量が大きすぎる。800gのSurface pro3はものすごくバランスが良く、ごろ寝やモバイルに使うことにためらいがなかったが、VAIO Z Canvasは毎日持ち歩けといわれると多少躊躇するだろう。重さも完全に「重たい」と感じるレベルに到達してしまった。
ただ、Surface Pro3のほうが頭おかしいレベルで薄くて軽いのであって、Z Canvasくらいまで膨れても、腿やおなかに乗せたり抱えて寝たりするのに支障は無い。割と片手で持っているのもSurface Pro3の時点でつらめだったし。スタンドの形や分離キーボードというスタイルが膝置きしにくいこともあって、ラップトップにするよりはタブレット形態のほうが楽だ。
ただ、Xperia Z Ultraを使ったときと同様、「これはギリギリ収まってるけどここで限界、この上は無理」という気はしている。

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●使用感


実際の使用感については次の記事にしようと思う。


●総評として


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さてこれこそがモンスタータブレット、プロ仕様PC、VAIOの本気、安曇野の狂気、イラストレーターの夢、戦艦大和、偉大なるモノリス、VAIO Z Canvasというわけだ。
比類無きスペックと華麗なる職人芸、マウスでなくペンでもってコンピュータと対峙する人々のイデア足らんとする前代未聞の野心作であることは間違いない。
「これ(と別売り¥16,934 (税込)のタイプカバー)さえあれば何も要らない」Surface Pro 3の次元を超越した、「これだけでさえ持て余す」Z Canvasといえる。

そんなZ Canvasだが、プロフェッショナルの道具と言えるのかというと明確に否であり、プロ向けでも初心者向けでもなくどこの層にも訴求しないと思う。それどころか買うのはお勧めしない。とすら思っている。



まあ聞け、聞けって。やめろそんなType Xで俺の首を掻っ切ろうとするのはやめろ。はなせばわかる。はなせば。


まず、プロというのは必要な道具になら出し惜しみをしないという人であって、スペックとギミックで威圧してくるオモチャを喜んで買う人のことでは無いのだといいたい。
そりゃあそりゃあプロは必要だと言ってXeon二個のせ、TITAN3発SLIとか平気でやるし人によっては自慢してくるけど、ほとんどのプロはもっともっと泥臭い次元でシビアにモノを選定しているわけで。「Cerelonの低スペゴミ安ノートだけど業務用」みたいなもんだってあるわけです。RS232Cついてたりするやつ。
それをあなたカネにシビアなプロがみなもの30万も出してi7のH型番とPCIe x4のSSDなんぞ求めると思いますかと。i3やi5の聞いたこと無いような型番のスキマCPUとか、クソ遅いけど4TBあるHDDが厳密なる予算と用途に合わせてバリバリ選べるようなのがプロ向けでは無いんですかと。よく考えたらvProすら対応してないぞこいつ。
もちろんZ Canvasの想定するプロは、インフラだの組み込み機器だのの開発でレガシーなソケットのケーブルが乱れ舞う系のプロで無いのは確かだが、高くてハイスペックなのがプロ向けでは無い。

Z Canvasの理念は「クリエイターをデスクから解放する」とのことで、とても素晴らしいと思うが、それならば何故もっと軽量のCPUで物理的な重さやバッテリーライフを改善しないのか。なによりなぜN-Trigなのか。ワコムがクリエイターのデファクトスタンダードなのだからワコムしかあり得ない。漫画家にGペンを万年筆に持ち替えろというようなものではないか。これはワコムのほうが優っているという意味でなく「慣れ」である。「慣れ」大事。
そもそも「クリエイターをデスクから解放」するというのは外で仕事することなのか?という感想が未だにぬぐえない。それ言い出したらCintiq Companion 2もだけど。スタバとか図書館で下書きやネームならまだしも、このスペックを使ってもりもりと完成品を仕上げろというのか。格好は良いが非現実的だ。クリエイターがノマドで完結しようとするのはかなり無謀な話に思える。ラフな下書きネーム打ち合わせならもっと性能的にも物理的にも軽いタブレットで全く問題ないだろう。

私見として多くの「クリエイターをデスクから解放する」デバイスがあるならそれは「完全無線動作の軽量Cintiq」をおいて他に無いと思っている。事務所内の高機動性が求められているのだろうし中にPC仕込む必要ないのではないか?まあ完全無線で遅延混線と戦うよりも、PC仕込む方が簡単ではあろうけど。

その点、Cintiq Companion 2はPCに繋げばただの液晶タブレットになる点が良い。というかクリエイターはCC2を買うのがベストなのでは無いかと面白くない結論に至ってしまう。

結局のところVAIO Z Canvasはプロやクリエイターの道具と言うよりも、「好き放題過剰にプロクリエイターごっこ志向で盛って作った結果、プロやクリエイターが使える局面も出て来たオモチャ」だ。多くのVAIO変態PCズにはそういう雰囲気があるが、Z Canvasも例外でなかったのかも知れない。

このマシンは仕事で頼れるアシスタントやパートナーや相棒ではなく、「二次元の完璧美少女」のような製品。そりゃ完璧美少女だから仕事も完璧にこなすけど。基本的にはVAIOの超すごいタブレット作りたいという欲望のはけ口から生まれた夢まぼろしの類。ぼくのかんがえたさいきょうのマシン、あるいはぼくのもうそうするさいこうにメチャシコの美少女。「タブレットに30万」という非現実的で多大な犠牲を払うと、そういうのがモニタから召喚できるわけだ。その術法教えてください。はやく。はやくしろ。いや失礼、とにかくアシスタントを募集しようというときに、なぜそういうものを召喚する必要があるのか。

だいたいクリエイターの意見を取り入れて開発という大々的な宣伝は、それまでどれだけユーザーの要望なんて知ったこっちゃないPC作りをしてきたかの裏返しじゃないか。ユーザーに使ってもらうための製品で無く、作りたい、売りたい製品を作ってきたという日本メーカーありがちなアレをストイックにした奴。だからファンも多いんだけど、Z Canvasもおそらくその根本に変化は全くあるまい。
あくまで、俺の作りたくて売りたいPCに"クリエイターの意見を参考に"というカッケー花を添えたい、以上の意味がない。すなわちものすごく地味な「クリエイターの意見」は無視されそうな感じがする。替え芯はどうなっているのかとか。


結論として、お絵かきのプロ、ガチ勢、初心者からでも「絵を描くための道具としてのPC」のお勧めを聞かれれば、僕は予算が見合うとしてもVAIO Z CanvasでなくCintiq Companion2、いやむしろ常識的なPCと安いWinタブレットと13HDクラスの液タブを別々に買うことを勧める。30万はそういうことが可能な金額なのである。それが全部一つになりました、ということが本当に良い事ばかりなのかどうか冷静に考えてみるべきだろう。

というわけでZ Canvasは高すぎ、無駄すぎ、凝り過ぎだ。たかだか道具なので好きなものを買えば良いが、たかだか道具だからこそ「絵を描く道具」を求める人間にこんなものが必要かどうかは疑問なのだ。馬車を牽くのに適切なのは馬であってモンスターではない。もっと言うならこんなものは強靱で恐ろしい畏怖や憧憬の対象たる「モンスター」などではない。好奇の目で見られるのみの見世物たる異形の「フリークス」というべきだ。それほどまでにVAIO Z Canvasは「道具」の姿勢としてあまりに非常識で、荒唐無稽で、野蛮な欲望がむき出しで、ほとんど夢を買ってるような、バカげていて…
最高のマシンです。



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トレスした。まるしー荒木飛呂彦岸部露伴は動かない。ちょう描きやすい。Clip Studio初めて使ったけどいいですね。

ここまでの話はあくまで道具に徹する道具だけ買って消費していれば良いという消費者の話であって、ぼくらガジェットファンやPCに夢を持っている層からすると「だからなんだ」って話である。
こんな、こんなタブレットでここまでやろうという馬鹿がほかにいるか。誰がそこまでやれといった。最高だよお前ら。タブレット使いにとっての夢の二次元美少女的メチャシコマシーンとか最高じゃないですか。
道具としてふざけてたって良い。ここまで夢と欲望ダダ漏れの衝撃的な製品を世に出そうという人の意思こそがクリエイティブで尊い。オーバーに言えば芸術品である。

もちろんこんなものを自慢げに出して量販メーカーとして成功するかは別だが、だけどぼくらユーザーが製品で無く売り上げをえらそうに語るなど、インター ネット地獄の生み出した悪辣な娯楽に浸っているよりは、スーパーすごいモンスターマシンを素直に愛でてる方が人間として格が上です(断言


僕個人はこのいろんな欲望で醜く肥大化したフリークスマシンをいたく気に入ってしまったし、それなりの範囲で同意を得られる自負はある。クリエイターの皆さんだって、そんな無味乾燥な消費行為しか念頭にないようならクリエイターとか言う変な人種やってないだろう。

気に入ってしまえば後は現実との相談だ。まあ30万という値段は頭おかしいんだけど、買ってしまえば不都合については当然ながら特段なにもない。むしろ最強に近い。液晶とかペンとかで改善の余地はあるだろうけど、少なくともモノ描く系のクリエイターで性能面においてこれで不満があるようなクリエイターはプロといえども少ないのではないか。
だから安心して買うがよい。もう心を動かされているのだろう。この頭のおかしいタブレットがほしくてたまらないのだろう。残念ながらその衝動に、CC2だのSurface Pro3だの常識的な代案などは存在しない。バカげた提案に代案など必要ないから反対といえば良いのと同じく、バカげた一目ぼれに対して買う以外の代案など無いんです。もう買うしかないんですよ。ざまあみやがれ。何が。

自覚無く道具に振り回されるのは愚かかもしれないが、自覚して道具に振り回されることを愉しんだって良い。道具に振り回される楽しさを存分に味わわせてくれる最高のバカPC、つまりVAIO以外の何物でも無い。Z Canvasとはそういうマシンです。よろしくお願いします(分割払いのシミュレーターを提示しながら)

※つづき

Windows10などを入れてみました








張っといてなんだけど、購入は公式ストアからのほうがいいです。






ぜんぜんアクセサリが揃わないのだけど、オーバーレイシリーズはもう出ていた。ミヤビックスは本当に頼りになるなあ