R0016606

断じて艦これはやらない。
さて今回、iPad miniを事情により手放したのだがさりとて8インチ画面は欲しい、と言うわけでWindows8.1タブを選んでみた。
Windows8.1タブレット、ことに8インチのこのカテゴリはどっかの軍艦擬人化ブラウザゲームのせいでまちがった流行のしかたをしている気がするわけだが、割と各製品のセールスポイントがきっちりと分かれていて非常に悩ましく面白い情勢となっている。Miix 2の薄さと軽さ、Thinkpad 8の高性能、Venue 8の安さとWWAN、dynabookTabのカメラ・AV性能、Iconia W4の…ん、なんだ、こうしてみると何が得なんだIconia。お前必要なのか。ヒデエ。
どれも基本的にはBay Trail-TのAtomを搭載し、2GBメモリで32bitで8インチで、と横に並びまくっているわけだがそれだけに相違点の違いにより特色ははっきりしている。Iconia除く。お前まだいたの帰れよ。ヒデエ。

その中でも特筆すべきはCPU性能や液晶性能が頭一つ抜けたThinkpad 8と、ワコムデジタイザ搭載という鋭角さをもって攻めてきた本機ASUS Vivotab note 8であるといえよう。

本当はThinkpad 8でも良かったのだけど、まず入手困難っぷりがいっこうに改善されない。この上Thinkpad 10などというまたしても素敵スペックなタブレットが出てくるようだが注文者にはいつ届くことやら。
次に値段が高い。いや高いと言いつつもそれくらいは出すつもりでいたのだが。

一方のVivotab note 8、どこでも入手できるのは言うまでもないが、楽天やヤフオクの少々怪しい業者さんを覗いてみると、なんと標準搭載のOfficeを抜いたものがその分ディスカウントされて売っているではないか!「その分」と言うには少々下げ幅が足りない気もするが、まあいい。

言うまでもないが、このような売り方はどう考えてもグレーどころか店側としては真っ黒だ。しかし僕ら善意()のユーザーが買う分には、別に誰に何を咎められることもないはず。Officeが必要な人はこうはいかないが、8型タブレットでOfficeを使いこなそうとするのは少々無謀だ。趣味ユースで使うに当たってOfficeが必要な局面は限られるし、32GBしかない容量に無駄なものは入れたくない。
結果としてこのすてきな液晶ペンタブつきWindowsマシンが26000円程度で手に入ってしまうのだから、Thinkpad 8がなんぼのもんじゃいと言う勢いで購入決定してしまうのも仕方ないことなのだ。ことなのだ。

IMG_20140517_104950

ことなのだった

ASUSはmemoだのvivoだのがつくかとおもえば気まぐれにtabやpadやnoteをつける、わかるようでわからない命名規則が好きだが、こと ネーミングに関しては、自社のローカライズ呼称さえ定まらないのが華碩電脳有限公司の魅力でもある。あるか。つーか普通にファシャオと言えば一番良いと思っ ているのだがどうか。

IMG_20140517_105038

Thinkpadといえば液晶ペンタブつきPCのX61Tを思い出す。思えばアレの問題点は大きさと重さとその割に低い(特にGPU)スペックだった。
同じワコムデジタイザ搭載の、同じ「タブレットPC」と言うカテゴリではあるが、あのX61Tに載っていたCore 2 Duo L7500(2Core1.6GHz 4M)等と比べると、AtomZ3740(4Core 1.33-1.86GHz 2M)は同等どころか上回る処理能力を誇る。まずHTでもなくリアル4コアというのが時代を痛感させて良い。
それでいてTDPは17Wから2Wへ8分の1程度なのだから恐れ入る。さらにはIntelHDグラフィックスによって、悪名高いGMA系の最底辺性能とは桁の違うグラフィックス性能を誇る。

これが発売時20万円のPCと、発売後3ヶ月程度でバッタモン屋で2万5千円のPCの比較だというのだから、PCスペック界における歳月の威力をまざまざと見せつけられる思いだ。そうでなくても昨今の省電力CPUの発展はめざましく、笑えるほどの差はもはやジェネレーションギャップというよりデジタルディバイドと言いたくなる。言うまでもなく意味はよくわかっていない。

IMG_20140517_105211

付属品は充電・同期ケーブルとアダプタ。最初からSDスロットにはリカバリ用microSDが挿入されていた。

IMG_20140517_105545


IMG_20140517_111458

さてとうとうAndroidやWP8まで所有した僕も、Windows8.1タブレットははじめてだ。初めてと言いつつも結局中身はWindows8.1なので、言わばPC・ガジェット歴で考えればiOSなどよりよほどなじみ深い。

R0016598

第一印象は、なんというサクサクさ!違和感のなさ!という、一昔前の人間ならこれがMicrosoftプロダクトへの評価であることなど、半日かけて説得しても納得してもらえないであろう驚きのワードが出てくる。
前述通りAtomZ3740は、このTDPにして1.8GHzまで上がり、あまつさえコア数4というおそろしい子なのは間違いないが、Windows8.1は本当に動作が軽い。少なくとも軽く感じる。正直そこらへんの演出は、AndroidなどよりよっぽどiOS的で巧妙である。Microsoftの知られざる実力を感じる。
スタートメニューがタイルだったりなどはWindowsデスクトップだと思うから受付けないのであって、こういうUIのガジェットと思えばむしろすてきに洗練されたグッドUIですらある。


反面、デスクトップ画面を表示させると完全にx86なWindowsの趣、かというとそうでも無い。ハードキーボードとマウスが前提のOSをソフトキーとタッチ操作で何とかしなければいけないわけで、無理矢理とまでは行かないが相当にクセのある独特の使い心地となる。
ここらへん、体験している人でないとわかりにくいが「昔ながらの『モバイル』や『UMPC』感」そのものである。あの頃はタブレットPCなどキワモノ中のキワモノであった。あの「無理があるけど手のひらでWinが動く喜び、歓び、悦び」がまざまざと想起される。
とはいえWinXPなどを動かしていたあの頃と比べれば「隔世の感」では生やさしいくらいに進化しているのは言うまでもない。まずなによりブラウザがタッチでも使いやすい。IEやChromeも「アプリ版」でないデスクトップ版であっても、タッチスクロールはもちろんピンチズームが効いたというか何故か「デスクトップ版の方がスクロールなどがスムーズ」だったりして笑う。
もちろん完全にiPad然とした使い方をするためには戻る操作やタブ操作などの面で一つ二つどころでない策を弄する必要があるが、感圧タッチパネルをスタイラスペンでぐりぐり押し込みながら画面端の極小スクロールバーを突いていたあのころを考えれば感動して涙が出そうだ。
静電タッチパネルは現代風の制御が効いているのか、意外と指でも思いどおりのところをタップできる。IPS画面は角度を変えても美しさを保つし、なにより筐体が厚くないわ薄いわ軽いわ。電源・起動系はUMPCの鬼門だったが、Windows8.1はかなりタブレットやスマートフォンライクなスリープ&復帰を実現できているし、何よりクソ安いから割と気兼ねなく使えるし…

ああ、これはモバイラーの夢の一つの形ではないか。あのころ、なんびゃくメガヘルツとかいうクソCPUと感圧タッチパネルで出来たガチのキワモノUMPCたちで夢を追いかけたモバイラーの、一つの到達点である。
そうだ。iPadの影に隠れてすっかり忘れていたあの頃の夢がここにはある。あるのだ。VaioTypeUよ、OQOよ、mbookよvilivよ、みんなの見た夢の到達点がここにあるぞ。こここそが未来だ、あのとき夢見た未来なのだー!(墓標の立ち並ぶ無人の荒野に向かって)

このようにWindows8.1タブレットはロマンとノスタルジー溢れる夢のデバイスであることは疑いないが、言うまでもなくiOSにしろAndroidにしろ、ああいうタブレットのゆるーく使える感じと比べてしまうと、かなり不便を感じると思う。いやそもそもWin8タブレットは、ああいうタブレット端末と全 く異なるジャンルの製品と考えるべきだ。タブレットの利便性を求めて使うと「ただの使いにくいPC」感に打ちのめ されて距離を置いてしまうだろう。

反面、「"PC"が必要」な人間や用途には「PCであること」がこの上なくモノを言う。「PCに馴染み まくっているがガジェットには疎いオタ」な人などにはむしろ向くはずだ。なにしろかにしろ、どこをどう切り取ったって"Windows以外の何物でも無い"のだ。そこにはスマホやタブにある「ええっ、これすらできないのか」「こんなにPCっぽいのに」「PCならできるのに」は一つも存在しない。それがWindowsタブレットだ。それこそウインドウを自由に配置してマルチタスキングするという、Windowsであればアホほど普通のことがWindowsなので普通に出来るというアホみたいな感想になってしまう。

R0016599

たとえばこういうことが普通に可能なのである。iPadなどが実装すると噂になって大騒ぎしてるような機能だがよく考えるとWindowsなのだから当たり前に出来る。しかしタブレットとして考えると結構なアドバンテージだ。

R0016600

とはいえタブレット機の宿命として、ソフトキーボードを使うとこのように画面の半分近くが覆い隠される。キーボードを使わない局面は問題ないが、意外とこれがWindows機であるからこそ使用頻度が高かったりするのが悩みどころ。

R0016602

キーボードが邪魔な程度で、動作も緩慢になったり等はほとんどしない。よく考えたらクアッドコアの2GBマシンなのだからブラウザやファイラを数窓開く程度に気を遣う必要など全くないはずなのだが、どうしてもちょっと気を遣ってしまうあたり、タブレットを「でかいスマホ」として定義けたApple・iPadの功罪といえる。
ちなみに普通のWindowsデスクトップでなく「タブレット端末で2画面分割をする強み」というものが、実際にこうやって疑似体験してみると何となく感 じ取れる。カーソルを持っていくマウス操作と違い、タッチパネルでの複数ウインドウは便利さや感触がかなり違って感じるのだ。ここらへんは体感すると何と なくわかると思う。


ここまではWin8タブの普遍的な評価。このあとはVivotab note 8のタブレット機としての印象、またペンタブ操作に関するあれこれや、気づいたことを中心に書いていく。

R0016595

まず外装はラバーコートなプラ。個人的に好きというのもあるが、クオリティは問題なく高いためMiixなどのアルミボディ機と比べてもそれほどガッカリ感はない。
なおべたべたに貼られまくったIntelシール、Windowsシールの類は開封数秒後には剥がして外箱に移植。

R0016607

8インチの筐体は、ちょうどiPad miniの縦を伸ばしたくらいで、私の場合片手ホールドが可能である。この「片手ホールドの可否」はタブレットの使い心地に対し重要な分水嶺となると思う。

R0016597

LEDなどが見当たらない本機だが、電源(ロック?)ボタンの縁にこのように電源ランプがあることはある。しかし言われなければ点灯していても絶対にわからない程度の大きさと光量。
フロントカメラ横には白LEDがあり、こちらはよく目立つが電源投入時とカメラ使用時にしか点灯しない。

R0016601

USBポートが筐体上にある。これは実際使ってみるとけっこう便利だ。充電したまま膝や机の上に置いて使える。

R0016603

ペンは案の定、周辺部が流れたり微妙にペン先がズレるFavo基準なペンタブシステム。ただし指先のタッチ入力より精密に操作できるのは間違いないし、画面いっぱいをキャンバスにしなければお気楽お絵かきには問題ない。
またペン操作の際はタッチ入力を無効化しているようでここらへんの切り替えもかなり巧妙で違和感を感じにくい。
お絵かきに際しては最新ドライバが出ているので早速導入し、筆圧感知などを万全にしたい。

R0016604

ペンではタッチ同様に操作もできるが、前述通り周辺が流れまくるため、まったくあてにならない。タッチ操作の方がずっと精密だ。ここらへん最新のタブレット事情からフィードバックしているのだろうが、タッチ操作は小さいボタンでもかなり補正してクリックを認識してくれるのに対し、ペンは本当にカーソル位置にしか反応しない。


IMG_20140517_131303

また、たまにラフに画面を突っついていると反応しない場面があって、よく見てみるとペン先の形状がいやに基部が出しゃばっており、ある程度以上の角度をつけるとペン先が画面に触れないと判明した。

IMG_20140517_131608


さっとけずってみる。仕組み上、傾けすぎるとやはり反応しないことはあるがだいぶ改善された。

R0016605

ペン操作はやはり筆圧対応アプリを運用したいが、SAIはともかくPhotoshopやClipStudioなどの重量級ソフトは、10数GBの容量と2GBRAMではかなり心許ない。お値段的にも重量級である。
どのみちいくら液タブ機能があるとはいっても、「本気の仕事」には向くとは言えないため、ここはGIMPやFireAlpacaなどの軽量級ソフトで運用したいところ。なによりお値段も最軽量である。


が、使い始めて1週間程度で悪名高い「コード10」エラーが発生。ペンを認識しなくなる。

対処法としては、順当に再起動したり、デバイスの有効無効を切り替えたり、ドライバの再インストール、タッチデバイス側の設定にある電源管理をオフにする、画面周辺を指圧する(!)、などして治ったり治らなかったり数日置いてからやったら直ったりするが、ちっとも治らない。最悪修理らしい。

が、さらに1週間後、届いたUSBホストコネクタにUniFyingのマウスやキーボードなどを接続していじっていたら唐突に回復した。
関係があるのかは不明だが、このタイミングは偶然ではなさそうな気もする。


しかしペン機能が使えないというのはスピーカーやボタンの不良とは比べものにならない。いわば最大のアイデンティティが消失してしまうトラブルであり、かなりガッカリ感が激しい。文鎮化や画面不良ほど深刻でなく、使おうと思えば使える状態なのがなおさら精神的に来る。
ぶっちゃけていうと「ペンがなくてもWin8タブとしては普通に使える」状態であり、それでもWin8タブ初体験者としては割と便利に使えるため、「こんなことならペン我慢してThinkpad 8買ったほうが幸せになれたよな」とか恐るべき邪念が心をもたげてしまうのだ。これは非常によろしくない。実際Thinkpad8も納期と修理地獄だという噂も聞くが、実態と邪念を抱くことの恐ろしさは関係がないものだ。

IMG_20140517_105415

何度も語るように、8インチWindows8タブを初めて使ったがなかなか鮮烈な体験である。Windowsの進化もさることながら、本当に「気楽にモバイルが出来るWindows」の威力は想像以上だった。ノートPCに及ばないのはもちろんだが、この場合はノートPCと共存、並行して使用し得ると表現したい。同時にiPadなどとも共存できる。緩さや使いやすさはないものの、フルのWindowsが使えるという信頼感が光る、Windows8タブレットなのであった。

だが、そういう意味ではべつにVivotabを選んで買わなくても良いかなあと、デジタイザの出来を見て思わなくもない。たしかに便利だし用途は広がるのだが、タッチオンリーの他のタブレットを超越した魅力かというとそこまででもない、お絵かきそのものも実際は小型のIntuosを一緒に持ち歩いても良さそうな感じがする。
なんとなく便利そう、と言う程度の意識なら「無くてもWin8タブとしての威力は全く削がれない」ため、他のを買っても後悔しない。という結論になってしまった。

「Windows8タブレット」が欲しいならもっと良い選択肢を選ぶべきだ。
「ペンタブ、デジタイザ」が欲しいなら本職のIntuosやCintiqが望ましい。
「ワコムペンタブのついたWinタブでなければダメ」という人には唯一無二だ。
そういう、微妙で有りながら確固たる立ち位置にいるのがVivotab note 8である。どうか絵師の一助にならんことを。