boko


のっけからめちゃくちゃ動きまくるぜ!(ゾイド)
写真だけでもう説明済んでそうなこちらはビタントニオのガラス製電気ケトル「VEK-600」。
ああまたそういう小洒落た横文字の名前なんておおかたイタリアとか北欧あたりの小規模メーカーのオサレ気だけどさほど作りは良くないキッチン家電持ってきて高く売りつける手法でしょうデロンギみたいにデロンギみたいに!とお嘆きの貴方、ご安心ください日本の会社です。あとデロンギに謝れ。


まあ実際GerbyのC3とか、Capressoとかまさにそういう欧米家電のガラスケトルは有りますしだいたいお高い。

スウェーデン・ガービー社C3ガラスケトル【送料無料】
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こういう連中に比べれば、このVEK-600はガラス製かつそう素っ頓狂でもない見た目にして、実勢価格は4,000円弱。1/3以下のお値段。とはいえ
元の値段が(家電の定価なんぞ有って無いようなものだけど)8,000円程度なので著しく安っぽいということはない。
組み立てこそ中国製なものの、ガラス部分はドイツSCHOTT製で頑丈。1リッター、1200Wと容量・パワーともに十分。


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とはいえガラスでないケトルであれば、更に半額くらいの値段で買えそうな昨今。なぜにガラスであるか。
端的に言うとガラスでないケトルは樹脂の臭いが気になる。以上である。

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こちらそれまでの樹脂製ケトル。

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使いすぎて劣化の極みにあり表面の樹脂がぽろぽろしはじめている。

実のところ「臭い」とはいえカップ麺だのインスタントコーヒーだのに使うのであれば気になるような激臭が付くわけでもない。健康に悪いとかそういう懸念も、わたくしのクソいい加減な衛生観念からすればほぼ無いと言っていい。さすがに上記のようにぽろぽろと樹脂がこぼれ落ちてくるとちょっといかがなものかと思えては来るが、それほど神経質に気にしているわけではない。
ただ、お茶やドリップコーヒーともなると話は別だ。なかなかこの樹脂っぽさが強く出てくる。いや正確に言えばそれでもなお「臭いがする」とは感じない場合が多い。むしろ逆に「お茶などの臭いを阻害する」方に働くのが樹脂臭さであると感覚的には感じている。

お茶やコーヒーにおける水の役割というものはおそらく一般的にはオカルトレベルの話に捉えられがちである。所詮はどう転んでも無味である水に変わりはないのだから味が変わるわけがないということだ。ごもっとも。
しかしここでいう水の重要性は、味というよりは口触りや香りの出の問題が大きく、あまりそういう観点でコーヒーや茶をすする人が多くないので理解がされにくいのだと思う。
実際に硬度の違いによる差などを比べれば二重盲検でも確実に見抜けるほどの差は存在すると思うんだけどそういう実験どっかにないのかね(他力本願)

というわけで内容物に全く影響を与えない(であろう)ガラスケトルまじ最強!という結論に無事至ることが出来た(真顔)。

厳密に言えばガラスも(これはショット製の耐熱ガラスとのことなので「デュラン」という名前の製品で、材質はホウケイ酸ガラスだ)水にホウ素やらアルカリやらいろいろ溶出する。化学実験などでは問題になる。
デロンギなどがステンレスの電気ケトルを作っているが、これもいろいろと溶出するのだろう。この世に水がある限り「器の素材が溶け出す」ことからはもはやのがれることはできんので、よほど低レベルな製品でない限りは、樹脂含めてあまり素材とか気にしなくていいと思う。全否定しやがった。

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VEK-600を見ていこう。見ていこうったってシンプルイズベストの電気ケトルにさほどの注目点があるわけでもないが。


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ガラスボディ。
注ぎ口までモノなフォルムでガラスである。ハリオやテスコムなど一部のガラスケトルは注ぎ口が樹脂だったりして画竜点睛を欠く。平たくいうとガラスのいみねーなーであり、無意味ということもないがせっかくのガラスケトルなのだからフルでガラスでありたい。まあ電気ケトルである以上沸かすためには金属の底部がほぼ必須なのだが。

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蓋の部分など直接触れないところには樹脂部がある。厳密に言うなら注ぎ口のフィルタ枠などは樹脂だったり。のみならずかなり安っぽい、不安になる作りだが、これはまあスルーしていいだろう。

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蓋の中心部のレバーを引っ張って開ける。
ちなみに取っ手の上部、平坦な辺りは沸騰後にかなり熱くなるので注意。

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沸かす部分。
当たり前だが金属が直接接している。ガラスオンリーということではない。ただ樹脂が露出しているような部分は見当たらない。


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ショット社製ガラスを示すマーク。製品名は思った通りデュランである。

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スイッチ
光る!ウウウオオオオオアアアアアア!
はあはあ、まさかゲーマーやオタ向けPC周辺機器以外で発作を起こしてしまうとは思わなかったぜ。べつに光るとかっこいいという話ではなく、スイッチオン時に点灯なんて電気ケトルでは当たり前なんだけど、一見デザイン重視で光りそうになかったのがだいぶイカす光り方をしたのがキモ。

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電源というか台座というか。
写真とはあまり関係ないが安心の空焚き防止機能つき。最近ではティファールなどが「倒した時にお湯が溢れない機構がついていないのは危険」という日本らしい理由で糾弾されていたが、VEK-600も特段漏れ出し防止などはついていない。ただ本製品の場合転倒した時はお湯漏れより筐体が割れることを心配するべきかもしれない。

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台座にはとくに機能はない。コード収納などもなく、ケーブル自体は意外と短い。極限までコストを省いている感。

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おみず投入。
ガラス容器の大きさの割に指定容量は少なく、MAXである1リッターは思ったより中間に位置する。なみなみ注ぐことはできない。とはいえ何度か試してみるとだいぶマージンを取っているようで、オーバーしたからといってとくに沸騰時間もあまり変わらず。1.2リッターくらいは入れられると思われる。言うまでもなく自己責任で。

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さっそくスイッチオン。

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陽炎が浮かんできた。

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湧く速度はまあ普通である。前のケトルが1000Wだったので、幾分早い。100V電源の国ではこんなもん。200Vの国では瞬間湯沸器の名に相応しいレベルで湧くそうだが、狭軌といいボルト数といい小さいものが好きな国だ。
速度だの水のクオリティだのはどうでもよくて、むしろこのかっこいい湧きざまこそがガラスケトルの真骨頂だろう。ヤカンやケトルで水が湧く様子は見慣れているが、透明な容器で横から観察するという機会はなかなかない。化学畑の人なら見慣れているんじゃないかと偏見を持っているが、そうでない我々にとっては、小学校でビーカーの水をアルコールランプで沸騰させる実験をやって以来になるはずだ。念の為に言っておくがガラスケトルといえども
沸騰石を入れる必要はない。

沸いたあとは、というか見た目以外は最初から最後まで普通の電気ケトルと変わらない。お湯を注いでお楽しみください。

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せっかくなので今回は台湾は台北の有名店、和昌茶荘の凍頂烏龍茶を淹れてみる。お安い同店にしてもなお格安の日常使い茶だが、今回は聞香杯まで用意してあるので本格派を気取れる。それに日本で買うとクッソ高くて萎えるくらいのモノではある。直接通販がおすすめ。

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頑張ってVEK-600を写しこむように努力してみた。

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ところで一応説明しておくと、聞香杯はこうして最初にお茶を入れ、それを茶杯すなわちカップに移し、空になった器の香りを嗅ぐためのものである。
ほかには急須のような丸い奴を茶壷、ピッチャーのようなガラス容器が茶海、器のようなものを茶船と呼ぶが、用途は大体想像する通りだ。

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お茶美味しい(KO・NA・MI・KA・N)

稚拙な感想はおいておくと、今までのケトルより確実に香りが良い。というか素直に言うならこっちを飲むことでようやく、前のケトルで沸かした水がそれなりに樹脂臭を放っていたかに気づいたという次第。淹れ比べるとよく分かる。
身も蓋もないことを言ってしまえばお茶ならばそもそもカルキ臭のほうが10倍くらい気になるというか悪影響なので、ミネラルウォーターは必須である。

ガラスということで気になるのは熱伝導率の高さ。ポットにうっかり触ってどれだけアツアツかということと、放置した際の冷めやすさ。
想像通りにかなり表面は熱くなる。まあ素材が何であれ余裕で持てるケトルのほうが少数派だろうが、
この点は樹脂性であればまだ熱さが伝わるまでに数秒のラグがある感触だが、こちらは速攻で熱さが伝わってくる危険な熱さだ。
放置した際にぬるくなる速度は、蓋を閉じておけば樹脂製とあまり変わらないような実感。さすがに魔法瓶仕様のケトルやポットほどは望むべくもなく、あっという間に冷めるという点では一緒だが、使い切りが基本のケトルではこれくらいで問題ない。

また、ガラスだと割れやすいのではないかというイメージがあるが、そんじょそこらのガラスではない強化ガラスのため、多少気を使うくらいのラフさで問題無いと思われる。最初思っていたよりもかなり薄手の作りだったので少々おっかなびっくりだが、元より熱湯が入ったケトルを振り回すように使うはずもなく、また茶わんやコップなどと違って大量の食器とごちゃまぜにして洗うようなものではないためそこまで神経質になる必要はないはず。
ちなみにガラスなので汚れなどはとても落としやすい。が、逆に言えば汚れてしまうと非常に目立つ。口が広く特に器具などを使うこともなく手を入れて中が洗えるのでその点はよい。


というわけでVEK-600
ヤカンや電気ポットもいいけど、ケトルの手軽さや省エネ性はかなり手放しがたい。そしてVEK-600はかなり良くできたケトルだ。ケトル業界自体が、見た目や保温性、安全性以外に大差ない業界のため、魔法瓶性能や転倒防止、漏れ出し防止などの有無を気にしないのであれば、実勢価格を考えてもかなり良い選択肢になると思う。ブランド性はまあデロンギや(まだ言うか)ラッセルホブスや±0のようにはいかないが、格好はひけを取らないほど良い。

これからはお茶が美味しい季節となるので、ケトルの活躍は増えると思う。ぜひVEK-600で薫り高いお茶を楽しんでいただきたい(広告っぽい締め)









ちなみにさんざコケにしたデロンギのステンレスケトルがこちら。
…ちょうかっこいい
いえ、その、実はそういうのだいすきなんでしてはい。まあある程度以上のクオリティあったら予算の範囲で好きなの買えばいいんじゃないかしら。