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初登場時は率直にいって「ボタン付きすぎワロタ」「ぼくのかんがえたさいきょうのマウス」などなどネタマウス扱い感が強かったことを誰が想像するだろう。
13ボタン数や自由回転金属ホイール、高度なプログラミングや詳細なDPI調整などのカスタマイズ性、無線と有線のシームレスな切り替え機構、少し大柄に見えるも持ってみると細身で適度なシェイプで構成されたボディ、それらを併せ持ったゲーミングマウスG700は、ロジクールの事実上のフラグシップとして当初の予想を裏切る勢いで勢力を拡大、そしてロジクールがゲーミングデバイス部門の再構成に合わせ、さらなる耐久性向上や汗で滑りにくい特殊加工を備えて舞い戻ったモデル、それこそがG700sである。完。
というわけでG700sである。平たく言うなら販売戦略の再編にあたってG700を新モデルであるかのようにバッジエンジニアリングしたマウス。身も蓋もねえ。
とはいえG700は発売後3年の今もまだロジクールマウスの選択肢の中で有力な地位を占める人気マウスなので、単に売れないモデルの延命という悪あがきではない。値段は新モデルのご祝儀価格になったがここは好意的にマイナーチェンジを受け入れたい。

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さて、なんでG700sを手に入れたのかというと、その再編のおかげである。MX-R使いの心を鷲掴みにしたG700はかくいうわたくしもユーザーであったのだが。そのG700が先日「カーソルが2,3秒反応しない病」に冒された。G700ではポピュラーな症状らしく、すぐさまサポートに連絡。3年保証はばっちりと効果を発揮し、本体交換となったわけだが「G700の生産は終了しているのでG700sでもよかんべか」ということになり、まんまとG700sを手に入れてしまったというわけだ。

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目を引く特殊コーティングによる紋様。というわけではなくコーティングと模様は無関係だ。模様のないところでも防汚コートは施されている。
これはもはやG700のころのように、名目上もオフィスやクリエイター向けマウスではない「ゲーミングマウス」である。遊び心や見た目のハッタリもゲーミングマウスではスペックの一部だ。

以前はグレー一色だったG700から見ると相当派手になっている。おとなしかったやつがしばらく姿を消したと思ったら、このような中二な紋様を体に描いて帰ってきたとなればどう考えても闇堕ち案件でありこんな状態は敵対側に操られているか、力におぼれて大切なモノを見失っていたりするに決まっているので、用心するに越したことはない。

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まずは外観。形状としてはMX-RやM950ほどぐにゅるぐにゅるとした形状ではないが、手にはよく馴染むゆるやかなシェイプを描く。大きさは決して小さくはないが、形は無茶ではないので持つのは楽だと思う。

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左右クリック、チルトホイール(nボタンマウスという業界では左右チルトと中クリックで3ボタン扱い)、中央の汎用ボタンx1(ホイール側にあるボタ ンは機械的なホイールモード切替ボタン)、そして左前方にDPI上下と残量確認に使う3つのボタン、そしてサイドにある怒涛の4連ボタン。これで13。

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4連ボタンは単なる押し込みボタンでなくヒサシのような羽根を備え、各々の位置によって「押し上げ/下げる」形でも反応する。構造というほど大げさなものではないが操作感は優れている。クルマのパドルシフトなどを想像するとわかりやすい。またこれにより4つのボタン位置の把握がやりやすく押し間違えも少ない。

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DPIスイッチャはそれ以外の用途の割り当ても可能だが、バッテリーインジケータボタンとの位置関係は少々難がある。ボタンが3つ並んでいる状態の概念として「上・中・下」の関係でなく「上・下・別」の関係にあるというのは直感的な理解を妨げる。DPIを下げているつもりがバッテリーインジケータが光るのみだったり。一応形状の変化などで区別が付くようにはなっているのだが、咄嗟の時に指先の感触より位置関係のほうが優先されるのは明らかだ。

しかしこれは圧倒的なカスタマイズ性能を誇るマウスだ。この3連ボタンの機能を上中下、あるいは似たグループの3種の機能に変えてしまえば良い。デフォルトを踏襲しDPIとバッテリーインジケータでも良いし、ズームやブラシサイズ変更を割り当て、中スイッチは100%固定やデフォルトに戻すなどでもいい。3Dツールなら視点移動やオブジェクト操作の御三家(回転・パン・ズーム/スケール)切り替えなどがふさわしいだろう。
4連ボタンやホイールと比べるとスイスイと連打したりながら操作を出来る場所ではないが、だからこそここに当てておきたい機能というものがきっと何かあるはずだ。

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真ん中ボタンのホイール側はホイールモード切替でもうひとつはカスタマイズ可能なボタンだが、中央ボタンを登録するにしても非常に押しにくい位置にある。バッテリーインジケータはむしろここくらいがちょうどよい気もする。
ロジクール伝統となりつつあるハイパーファストスクロールホイールは、チルト付きなのが当時のNagaなどに対する大きなアドバンテージと言える。最近メイン使用しているG600に搭載されていないことがつくづく心残りで仕方ない。

もちろんのことこれらは左右クリックと機械的切り替えスイッチを除き、Logicoolゲーミングソフトウェアによるフルカスタマイズ対応。最近ではもはやMX-Revolutionのように、幾つかのボタンが固定だったり内容が限られていたりしていてげんなりする事態はほとんどない。
アプリごとに自動で切り替わるプロファイルは5種類。これに加えオンボードメモリにも保存でき、LANパーティも安心かつnproなども突破する。

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ボタン以外のハードウェア面はさすがのロジクール中級以上機。ゲーミンググレードらしいしっとりざらざらなグリップ部。乾電池式で軽くはないがバランスと滑りは非常に良好。

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レーザーセンサーは中央。左右や後方に寄っているとマウスを動かしたときに意識とのズレが生じる、という人もいるので、積極的に真ん中配置にすべきだと思う。
センサー性能だが、もはやロジクールのハイエンド付近ともなると、とりあえずまともなマウスパッド(SteelseriesのQCKが良いです)の上では正確無比以上の何を言えばいいのかわからない。DPI感度調整の幅も十分に広く、カーソルが飛ぶだの反応が遅いだののトラブルやストレスとは無縁。
当たり前のようだが、未だに廉価なマウスでは意識しないと気づきにくい程度のでズレや遅れや飛びなどが起こっており、直感的な操作感を阻害している。ローエンド使用者がハイエンドマウスを買って感じる操作感の快感は決して高い金を払ったことによるプラシーボだけではない。だけでは。
つかむ、動かす、狙ったところに止める、機能を楽しむ。すべてが快適である。
基本性能の高さが番人への快適さと結びつくのはクルマからマウスまで共通の真実。

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電池蓋の下にレシーバーを収納可能。レシーバーはUnifyingではなく、専用のもの。おそらくレイテンシとかの問題で非Unifyingにせざるを得なかったものと思う。
電池はエネループ(相当のもの)が入っている。

全方位評判の良いG700の、唯一ともいえる欠点がバッテリーの持ちの異様な悪さであった。つけっぱなしでは3日と持つ余地がない。M705の「2年」という、耐用年数かよと言うレベルのバッテリーの長寿命や、昨今のロジ製品の多くが誇る数ヶ月は持つスペックから見れば、3日で切れるG700のショボさは際立った。

だからこその有線/無線切り替えである。しかしこの切り替え方式は実際に使うと問題があることがわかってくる。

たとえば無線接続でプレイしていてバッテリーが切れたとする。そこで有線接続に切り替える。プレイは継続できるしバッテリーも充電されていく。ここまでは理想だ。
プレイ終了後はどうか。「多くのユーザーはプレイ後PCの電源を切るし、多くのPCは電源を切ればUSB給電が行われない」
電源を切ったPCにつなぎっぱなしにされたG700はどうなるか。もちろん充電はされない上、困ったことにG700は「ケーブルが物理的につながっている時でも無線電波を切らない」仕様になっている。これはケーブルをカラ接続したまま無線動作させてみればすぐわかる。
つまりユーザーがプレイし終わって寝ている間、ずっと無線電波を待機している状態となり、バッテリーを消費していく。次の日起きたユーザーが無線モードで使おうとしてもバッテリーはカラだ。

一応無線マウスであるからして電源スイッチは底面にある。しかし誰が「有線接続されたマウスのスイッチを切る」ことを思い当たるだろう。さらに厄介なことには「スイッチを切ってしまうと有線接続でも動作しない」のだ。誰が有線マウスを使うために電源を入れるというのだろう。

ゲームプレイに耐えうる高レポートレートや信頼性とトレードオフでバッテリーの持ちが今ひとつなことは納得できる。しかし「G700はバッテリーが持たなすぎる」という世間の評価の裏には、どうもこういう仕様の影響が多分にあるのではないかと見られる。

ただクソ仕様を運用でカバーするのは我々ギークの生まれ持ったさだめであるからして、回避法はある。「PC電源を切った時でも通電するUSBポートを使う」か、「ケーブルのつなぐ先をPCではなくUSB-ACアダプタにする」ことだ。言うまでもなく後者は有線接続を捨てることになる、というか切り替え機能を捨てて単なるM950と同じ仕様になるわけだが、結果的にはそれが最も良いと思う。バッテリーをバカ食いするほどの高レートだけあり、無線接続でも何ら不満を感じないからだ。そもそもそんなハイエンドな領域を争うゲーマーがこんなあるだけいっぱいボタンつけまくったマウスを選ぶわけがない。

また焼け石に水程度の対策ではあるが、電池をエネループプロなど大容量の充電池に取り替えるのも手。酷使し過ぎて1日持たない、ということはなくなるはずだ。

長々説明してきたが、G700はG700sになっても全くこの辺り改善されていないので、そういうものだと諦めて上記対策をとるようにしたい。

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G700sの、闇堕ちした模様以外の数少ない変更点として、ひとつはDPIの最大値の増加(5700→8200)だ。これによってセンサー性能は一段と高くなった、とはいえ実のところこれはセンサーのメーカーの都合だろう。使われているセンサーは単純にG700のころのセンサーのマイナーチェンジモデルであり、G700sを作り直すにあたり同等品を調達したらマイナーチェンジされてた、程度の理由ではないだろうか。それこそG700を修理したらG700sが来たように。

また、マイクロスイッチも耐久性が上がり、2000万回の高耐久性を獲得したとのこと。ロジクールはモデル中期になると廉価版のrシリーズを出したいていマイクロスイッチを低耐久のものに変更するが、今回はむしろパワーアップとなる。これならばチャタリング耐性が期待できるものの、3年持たないくらいのほうが適度な時期に新品交換に出せて良いという意見もあるのは内緒だ。

防汚コートの威力はそれなりに感じる。たしかに汗のベタつきや皮脂は前よりつきにくく、汗で滑るということもないようだ。
夏場などはハードなFPSプレイでなくても汗はかくものなので、不快感が少ないのはいい。


LGS(Logicool gaming software)使い方はG700やG600など他のマウスと共通だ。ただLGSに表示されるマウスは相変わらず模様のない素のG700だったりする。内部基板的には区別がないのだろう。

オンボードメモリとの切り替えや、Setpointよりはマシになった感じのカスタマイズが行える。Setpointに比べれば暴走などもあまり起こるイメージはない。
悪名高いRazerのソフト周りと比べるとその安定感に惚れ惚れする。完璧というわけではないがむこうがあまりにもこう…なんというか…

まったくフォローしていなかったが、このモデルはファイナルファンタジー14新生エオルゼア推奨マウスという肩書も持っている。ガチガチのMMORPGマウスであるNagaやG600ほどのボタン数は無いが、あれはあれでMMORPGなどの特殊用途以外ではぶん回しにくい。G700sは横にブラウザでWikiとニコニコと艦これを表示しながらMMORPGをやるようなマルチな用途にもってこいだろう。


というわけでG700sであった。
G700の頃からもそうだが、間違いなく銘器と称していい魅力と信頼性がある。唯一の鬼門バッテリーをどう料理するかがユーザーに問われるが、それ以外はとても秀逸なマウスだ。
「謎の力に支配され光を見失ったとしても、ヤツの性根までは変えられはしない」、とかなんとかM705あたりに言われてそうな闇堕ち模様や、まだこなれていない価格など、G700sが安定的な地位を得るにはもう少しの時間が必要だろうが、新製品のG602などを見ても、しばらくは鉄板の地位を保つことは確実視できそうだ。









ちょうかっこいい外観を得たG602だが、スキマに収めすぎて尖った仕様となっている