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まさに究極と至高の対決。
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キーボードマニアの夢、RealforceとLibertouchの頂上決戦が僕の机の上で実現。

実は業務用キーボードの雄である富士通の誇るハイエンドコンシューマキーボード「リベルタッチ」シリーズは、いやシリーズというほど種類はないが、知る人ぞ知る伝説の名機である。いえ現行品です。
その価格定価18000円。それも2007年発売にして未だに最安値は12000円を下らない。それもどこぞの液晶付き分離合体うるとらすーぱーキーボードなどとは違い、USB1.1(!)のハブが一個付いている以外機能らしい機能など何一つ存在しない「素」のキーボードが、だ。ストイックとか玄人好みという言葉でもまだ足りまい。

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で、何で唐突にそんな玄人好み過ぎて異臭がするようなリベルタッチなど買っちゃったかというと、ハコ汚れ品が5000円で売ってたから。
…信じられないだろうけど自分も未だに信じられない。原資さえあればもうひとつくらい買ってただろう。
まあ物自体も古いし、買うのなんてマニアだけだし。それに英語配列というのが大きかったのだろう。これが同じハコ汚れでもリアフォだったりしたら1000円すら値引きやしないのは確定的に明らかなのだ。これが市場原理か。

しかし市場原理から言っても、このリベルタッチほどのハイレベルキーボードが日の目をみないのは奇妙だ。単に全く宣伝らしい宣伝をしていないからだとも言われているし、それはある面では真理だ。しかし今やタイピングにさほど興味のない人間でもほとんどが知っている「最高級キーボード」であるリアルフォースも、最初は宣伝らしい宣伝などしておらず、業務用機器としての実績はあるにしても口コミだけを頼りに今の地位を築き上げた筋金入りの叩き上げである。業務用キーボードとしての実績なら富士通だとて全く劣るところはない。
その原因の一つとしてはリベルタッチのキースイッチの方式に依るところが大きいだろう。キーボード界隈には大別して3つのキースイッチ方式がある。

・リアルフォースによってその名を知らしめた高級スイッチである「静電容量方式」
・マジェスタッチなどの有名シリーズや、昨今ではゲーミング界隈にもこぞって用いられ高級スイッチとして定着した「メカニカル方式」
・普及価格帯のキーボードの大半を占める「メンブレン方式」

ノートパソコンなどに用いられThinkpadなどで名を馳せた「パンタグラフ方式」もあるが構造的にはメンブレンだ。
このうちリベルタッチが採用するのはなんと一番格下のメンブレン式。下手をすれば900円のキーボードでもまだメンブレンスイッチに加え便利なメディアキーなどが備わっていたりする業界で、10倍以上の価格を出して同じスペックの物を買う奴はいない、ということなのだろう。


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リアルフォースにも言えることだが、いちまんえん以上の機器と聞いて想像するような高級感は一見すると無い。
しかし何やら通好みな妙なオーラはたしかにある。重厚な厚さやあまりにも「そっけなさ過ぎる」デザインに起因するものだと思われる。言ってしまえばレトロなキーボードはみんなこんな感じだったりするものだし、2013年現在で2007年の機器となると言わばPC業界では十分にレトロの域だが、リベルタッチはそれよりもさらにレトロで古臭い印象を醸し出している。
キーボードが安物となりはてたのはそれこそ近年のことで、昔はキーボードだけで数万するのが当たり前だったと聞く。Windowsどころかマイコンとかそういう世代の話だ。その時代の何か意思というか流れというかミームというかそういうものを受け継いでいるのではあるまいか。とは言え自分とてWin98より前は一切知らない世代だし、そんなものへのシンパシーも感じない。
結果として僕から見ると端的に言って古臭く色気も素っ気もない。

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更に言うならロゴもダサい。この、一語を表記する中でフォント(ないし最低でもフォントの傾向)を統一しないというのは究極にダサいロゴのハイエンドクラスに位置すると個人的には思っている。大きさも妙にでかいし。ロゴの大きさや華飾さとメーカーのブランド力への自信の無さは比例する。

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しかもそのとなりにある謎の凹凸が全くもって意味不明過ぎる。何に使うのか、なぜこんな形なのか、分解するとここだけ空白になっていてネジ受けが付いているという噂もあるが、結局何のオプションを挿入するつもりだったのか。すべてが謎。キーボード界の七不思議の一つに数えていいのではないか。残りはリアルフォースに無線モデルが登場しないことやThinkpad701のバタフライキーボードの存在そのものなどが挙げられる。たぶん。

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挙げ句の果てには、前述した後ろのUSBハブポート。一個口なのはまあ許すとしても、仕様がUSB1.1なのだ。正気の沙汰ではない。リベルタッチの登場は確かに2007年ではあるものの、当時ですらUSB1.1などレガシー規格とは言わないまでも2.0の登場で一線から退き終わった時期だったはずだ。(USB2.0の策定は2000年。3.0が2008年)しかも初期にはここの不具合まで出しているとのことで、溢れ出んばかりの「じゃあ付けんな」感にめまいがしそうだ。

端的に言うと「商売する気がない」としかいえない製品だ。言うなれば、もともとニッチな界隈で商売を続けたがため生き続けては来たものの、老舗といえば聞こえはいいけれど世の流れから完全に取り残された状態にあり、このご時世でも当時の感覚だけで商売をしている気になっている、老害のようなメーカーの製品。というありがちな存在を想起させる御姿。
まあよりによって富士通だからしゃーねーべ、という気分にはなるものの、同じ富士通グループのPFUなどはHappyHackingKeyboardという銘機を様々な方面に売り込むことに成功しているし、成功のあまり低価格化しメンブレンスイッチとカーソルキーを備えた商売っ気たっぷりのLiteモデルなども出して好評を博している。なぜ差がついたか。

逆にこういうのが良いのだというブス専、失礼、ストイック好みのマニアも居るだろうし、確かにむき出しの不器用さからくる独特の高潔さや迫力は備えてはいるものの、それでも昭和のニッポン的ものづくりの時代ではあるまいし、真摯な商売っ気はむしろ現代の製品には必要な物だと思う。本当にこんな「精神が骨董品」な製品であるリベルタッチは良い物なのか?もう少し筐体を見ていく。

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スタンドがついてはいるものの、この重厚な筐体を支えられるとは思えないほど弱々しく安っぽいプラ棒である。ほんとにここだけ表面処理が違うためテカテカ感が際立つこと際立つこと。
筐体はむちゃくちゃ重い。リアルフォースも重いといわれるキーボードだが、鉄板フレーム二枚が入っているリベルタッチの重量は確実にリアルフォース以上だ。

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リアルフォースとは多少構造を異にするものの、それぞれの段で角度傾斜が異なるステップスカルプチャを採用。
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クセのない配列。英字配列なのがなおさら、Windowsキーやアプリケーションキーの存在すら奇妙に思えるくらいに旧態然とした雰囲気である。サイズもふつうのフルサイズ

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なぜか正面上にあるおなじみ3ランプ。この構造ならテンキーレスモデルもすぐ出来るな!と思いそうになるが、相手は融通と商売を虚空の彼方においてきた老害である。2007年の登場から5年以上が経過した今でも出たのはこの英字モデルのみで、キー数のバリエーションは存在していない。

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PS/2でないUSB接続。これがPS/2ならむしろ利点だったとすら思えるのだが。


さて実際にキータッチなどを確かみてみよう。
すとんすととん。

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スペースキーのみ丸みを帯びている。

一打して気づくのはそのなめらか極まりない押下感だ。メンブレンスイッチは概ね「ゴムを押し込む」不快感に似た感触が支配的なものだが、リベルタッチは全く違う。むしろメカニカルに近い、それもCherry青軸や茶軸に似たクリック感(タクタイル感)と、黒軸のリニア感が同居する奇妙な軽やかさのある他に類を見ない押し心地だ。
これはリアルフォースともまた違うし、メカニカルキーの感触でもない。

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とりあえずその不思議を探るためにキーを取り外してみた。キー一つ一つは付属の機器で簡単に取り外し、内部のゴムなどを換装できる。

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とりあえずキートップを開けてみて驚くのは、巨大なラバーキャップとスプリングの存在、またあからさまにコストがかかっているキートップの構造だ。

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英字配列らしく長大ながらどこを押しても同感触のスペースキーにすら、ガイドこそあれど当然のように金属棒などは入っていない。

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キーの質感自体は大したことはない。印刷も、昇華印刷であるリアルフォースと違い単なるレーザー。

以下2つは一般的なメンブレンキーボード

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ご覧のとおりリベルタッチと一般的に言うメンブレンキーボードとは明らかに様相が異なる
写真のような「いっぱんてきなメンブレン」はキーを支えるのはガイドであり、反発力は表面のラバーシートのみによるものだ。

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一方でリベルタッチの構造は、接点こそシート状であるものの、ラバーはキートップ側に個別に備え付けられており、キートップは複数パーツによる構造体、更にはその中心にはスプリングが備え付けられており、その内部の突起が接点を押すことで通電する。接点はラバーに覆われておらず、ほぼむき出しの状態で触れれば感触もないくらいの軽さで通電する。
これ、すなわち言ってしまえばメンブレンよりも静電容量方式に近い構造なのだ。違いは最終的に接点があるかないかの差でしか無い。これによって耐久性の差は確かに生まれてくるだろうが、キータッチの差にはつながらない。静電容量無接点方式とはあくまでキーの通電ONOFFが静電容量の多寡で判別されているというだけであって、キーの反発や戻りはラバーカップとバネによって行われているものだからだ。物々しい名前が付いているからといって別に電磁場による浮力でキーを維持したり反発力を生み出しているわけではない。


「速く打てて疲れにくい」キーボードの秘密――東プレのRealforce 106
http://www.itmedia.co.jp/news/0207/11/nj00_topre_key.html

2002年の記事。

リアルフォースの素晴らしいタッチは、ハード面で言うなら細かい調整がしやすいよう可動電極に採用した円錐バネによるものである。それならば同じくバネを用いるリベルタッチと間のスペック差は小さいはずだ。
それにラバーの構造については、巨大で換装可能なラバー構造を有するリベルタッチのほうが分がありそうだ。

つまり残るは両社が持つキータッチに対するノウハウとセンスと哲学というソフトの勝負になってくる。それであれば富士通だとてそこらの新興国メーカーどころか国内企業を並べてみてもキーボード界においては頭ひとつ抜きん出る存在だ。親指シフトキーボードの始祖たるDNA、決して伊達ではあるまい。

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ゴムは赤い35g、青透明な45g(最初から付いている)、白い55gの3種類あり、硬さを調節できる。
変えゴムの数が各々15個で、普通のホームポジションで指ごとにしかるべき荷重を割り当てると1つ足りなくなるというド阿呆な仕様は、そもそも正規ポジションでタイプしない自分には愛嬌で済んだ。

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しかしまたこの打ち心地たるや…軽やか。じつにかろやか。
実に文字打ちが捗る。指先が跳ねるように舞う、というほどタイピングの出来る人間ではないのだが(それどころかタッチタイプすら出来ない)それでもこのキーの感触が甘美なほどに洗練されていることはすぐに分かる。

メカニカルでもないはずなのに、感触としてはがしゃこん、がしゃこんとタイプライターを打つかの如き実感がある。やはりタイプライターから連綿と続く遺伝子の産物だということだろうか。と言って、打鍵音がうるさいとか押下の感覚が引っかかりを覚えるということもない。
押す力は標準の45gであってもこれ以上なくなめらかで、抵抗というものを感じさせずそれでいて感触として指に残る適度さ。そのくせ押し抜いたあとに指を持ち上げると、電気的なサーボ機構でもあるかのように若干強めに反発して指を持ち上げ指の重さを感じさせない。絶妙極まりないバランスだ。かろやかな打ち心地はここに起因すると思われる。
打ち心地は軽やかだが剛性感は高い。持って帰るのが苦痛だったほどの超重量に起因する安定感と、これ以上無い精度の高さ。押した先が押したように反応する、ガチムチに歪みねえボディを感じさせる。

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これはすごい勝負だ。高次元過ぎて後は好みの問題になってしまう、素晴らしい拮抗である。

もはやタッチタイプすら出来ない人間がこれ以上語るのはやめよう。ていうか何一つ比較も対決もしていない気がするが。ただそんな自分でも言えるのは間違いなくリベルタッチの打ち心地の上質さはリアルフォースに並んでいる。リアルフォースにスペック上で劣るとおもわれるのは耐久性だろうが、ここまで惜しまぬ高コストを感じさせる製品が、そこらの安物メンブレンと耐久性が変わらないわけもないだろう。
どっちもすごい。もうそれでいいです。どっち買っても打ち心地という点では絶対に後悔しない

つくづく富士通の商売の下手くそさに歯噛みをしたくなる製品だ。そもそもからしてこの構造を「メンブレン」と称すること自体が販売戦略ミスだ。製品よりもスペックシートを信仰するここ日本の消費事情では実態などよりも『メカニカル」や「静電容量」であること、すなわちメンブレンでないことが価値となる。なんてイヤラシイ。そんな市場に、ここまでこだわりぬいた製品を投入するならば、適当にメンブレン以外のスイッチ方式を創作してつけておけばよかったのだ。実際に一般的なメンブレン方式とは似ても似つかない中身なのだから消費者だって納得するだろう。
キー一つ一つのゴムを入れ替えて荷重調整出来るなどというマニア向けの機能をつけるくらいならいっそ思い切りマニア向けに振ってしまえばよかった。LEDを仕込め。WASDキーの色を変えろ。HHKB並のコンパクトモデルを出せ。親指シフトモデルはどうした。光らせろ。二度言った。
リアルフォース対抗馬としても、各方面のマニア向けとしても、なんやかんやで決定打が足りていない。2009年に英字モデルを出して音沙汰なしというのも痛い。

さんざストイックでマニア向けと言われたリアルフォースですら、今やブランドが構築されバリエーションモデルも出て、けっこうな物欲を満たせる現状にあって、「素晴らしいタッチ」というだけで10000円がポンと出せるかという、ストイック過ぎるマニア精神が問われる、悪い意味で真のマニア向けキーボードこそがリベルタッチだ。いやほんと、タッチの良さだけならば絶対に間違いはないハイレベルだ。好みの問題こそあれ、一日中キーボードと向き合うタイプの人間なら所有しておくべき域の製品の一つだ。


しかしながら、わたくしはこんなものを誰かに進めることはしまい。余程のこだわりを持ってリベルタッチが気になる人間なら自分で決め打ちで買うだろうし、そうでない人におすすめするならリアルフォースで済む話だから。

どうしようもなく「他人と違うものがいい」とか「マジキチしか買わないようなものであればあるほどよい」というどうしようもない私の同類の方ならば、検討してみてほしい。買わずとも、どこかで実際に試すことが出来れば幸運だろう。

もちろんキーボードのタッチなどにさほど興味のない人間であっても、仮に5000円とかの捨て値で売られていたのを見つけたら即確保してオークションに流すべきだ。確実に錬金が成功するだろう。
かく言うわたくしも最初はそのつもりで確保したのだが、すっかりリベルタッチに惚れ込んでしまったのでこの分はマジェスタッチ黒軸を売ることで補填しようと思う次第だ。やはり良い道具は魔物である。



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ちなみに、リベルタッチにはこのようにCapsLockとCtrlを入れ替えられるようなキートップが付属している。とはいえ当然キーボード側で入力を切り替えられるような気の利いた機能などは無い。つまりはレジストリをいじって自分で入れ替えろというわけだ。

お言葉に甘えてレジストリをいじってキーを変更し、対応させてみた。

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…なんか変でしょうか?万人が望むベストな形だと思うのですが


※CapsLockにCtrlを割り当てるコマンドは以下。

REGEDIT4

[HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\Keyboard Layout]
"Scancode Map"=hex:00,00,00,00,00,00,00,00,02,00,00,00,1d,00,3a,00,00,00,00,00

これをテキストファイルに保存し、拡張子を.regに変更してダブルクリック、再起動で行けます。
本当にCtrlと入れ替えを行うコマンドは自分で探して下さい。


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