プリンタ業界の商売方法として「プリンタを安く売ってインクを高く売る」といういわゆるインク商法とか消耗品商法と呼ばれるものがあるのは有名な話です。

しかしその分安く出せるからといって、それでもプリンタというもの、モーターでブラシをうごうごさせて歯垢を取る程度の機構のものではないのは当然の話。(関係ないけど電動歯ブラシの替えブラシの値段は気が狂ってる)
筺体も大きいし中味は複雑。いくら安売りすると言っても限度があるのです。

いえ

限度ってものがあるものだと思っていました。さっきまでは。
3800円でA4の無線LANプリンタが売ってるのを見るまでは



HP Photosmart Wireless B110a インターネット直接接続・無線対応・黒顔料・4色独立インク A4インクジェット複合機 CN248C#ABJHP Photosmart Wireless B110a インターネット直接接続・無線対応・黒顔料・4色独立インク A4インクジェット複合機 CN248C#ABJ
販売元:ヒューレット・パッカード
(2010-08-05)
販売元:Amazon.co.jp
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3800円ですよ。モノクロプリンタじゃねーですよ。

いや4000円くらいならCとかEとかの会社からでもL判の写真プリンタとか普通のA4顔料プリンタとか売ってはいるけれども。何が壮絶かって、無線LAN接続機能がついてること。「ネットワーク接続」という時点で業務用機か高級機種、それも無線LAN標準なんて最新鋭機というイメージがあるぼくには、格安プリンタにこの機能があるなんて到底信じがたい。

でも実はHPは、格安プリンタにもネットワーク機能や無線LAN積んでるエラいメーカーなんだけども。PCが一家に一台というご時世じゃない今こそこの機能は必要である。プリンタ自体の需要についてはスルーだ。
なによりとにかく「A4プリンタ3800円」。このインパクトはなかなかに抗いがたい。他にもそもそも写真用であるとか、タッチパネル液晶で操作とか、カードスロット付きとか、なんというかすごい。さらにはネットワーク対応で無線LANで…

はて、「無線LANプリンタ」
この魅惑の響き。なぜかアップル信者の僕に強烈に訴えかける何かがあった。なんだ。何かどこかで必要とされていたような…欲して仕方ない状況があったような…思い出せない…ああ、頭が割れるように…

ハッ

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ドォォォォン



使用アプリ:集中線


というわけで忘れてる人が多いであろうiOS4.2の新機能「AirPrint」にも対応している。「Appleの新機能に対応」って一文だけで気分的には高級機の仲間入りである。実際使うかどうかは別として。

そういうわけでこれは凄い、物欲をそそるぞ。買おうか。しかしプリンタそこまで必要では。でも3800円と来た。うーむ。

などと悩んで仕様を読んでいたら

「スキャナ」

の一文字に心を折られた。複合機だったのこれ。スキャナまでついててこの値段。いやおかしいだろ。イカレてるよ。プリンタだぜ?4000円のプリンタがあったとして「無線LAN&ネットワーク」「写真対応」「スキャナ」それぞれ言葉ひとつに付き3800円追加って所だろ。こわい。逆ざや怖い。
あまりの怖さにうわあああんと泣きながら会社帰りにiPhoneからプリンタを注文。これもある意味ではAirPrintと言えよう。言ってろ。


Photosmart Wireless B110a
http://h50146.www5.hp.com/products/printers/inkjet/convenience/b110a/

2010年夏 新発売!とか書いてあるのが、リーズナブルな物を購入した感があってよろしい

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とどく。
このサイズになるとたいていそうだが、アマゾンで頼んでも届くのはもろにこのHPの箱に納品書貼ったものなので、家人にナイショで買う向きには注意を促したい。ただその理由が金銭面の場合、3800円でPC周辺機器を購入することすら内緒にしなければならないご家庭というのは、少々台所事情に見直しが必要ではないかとも提言しておく。

仕様でコンパクトだとか言ってるが、A4プリンタなのでA4の紙よりはでかいです。当然

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どーん
エコ梱包とやらでエコバッグ的な不織布のバッグが2種付いている。エコなら発泡スチロールなどつけている場合ではなさそうなものだが。この中にプリンタ本体、ケーブルなどが入る。持ち歩きにも使える?破れそう。そもそもプリンタ持ち歩くって何。

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黒々

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前給紙、前排紙。コンパクトなのはいいが排紙部分ににトレイがない。ほったらかして排紙しまくってたら給紙に干渉しないのかと思う。あと給紙は印刷面が下で間違いやすい。
給紙トレイは折りたたみで伸びる。

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裏側。USBと電源。無線LAN使用なら電源一本で済むし場所を選ばない。

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液晶部とリーダー部。ワイヤレスなスイッチと電源キーもここ。
USBメモリを刺したりはできないようだが、SD/MMC/MS対応。CFとか使う人はこんなプリンタ買わないでちゃんとした写真用買いなさい。

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これで写真の画質を確認とかそういうハイエンドな用途には全く使えないし使いたくもないレベル。ただナビゲータとしての表示はわかりやすく及第点。ちゃんとUIはアニメーションしたりする。
液晶の左右がタッチパネル。モニタ自体にはタッチしても何も起きないので注意。
言うまでもないけど、液晶と操作部とカードリーダーとスキャナがあるということはPCがなくてもプリンタ単体でカードさして印刷したりスキャンしたりコピーもできるということです。

スキャナ部

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A4対応。
本体は黒黒してるけど、スキャナ蓋を開けた当たりはなんだか紫っぽい。この謎カラーはHP製品によくあるよね。黒にしとけばいいだろって思うんだけど微妙に色合いが付いてるっていうアレ。

準備

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インクを入れる。ヘッダ部は自分で左方向にスライドさせましょう

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巨大なオレンジのプラパーツは何かホルダーのようだがゴミです。

セットアップ残り時間を表示。5分ほどかかる

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このあとテストパターンが印刷される。面白いのはテストパターンをB110aの自前のスキャナに通すことで自動でヘッド調整を行ってくれるというもの。複合機だと当たり前なのかもしれないが賢いと思った。

セッティングと調整の後は無線LANセッティング。

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APは検索してくれるものの、WEPキー入力は左右ボタンと決定とキャンセルしかないという拷問のような仕様を切り抜ける。終わるとネットから自前で何がしかをインストールし、WebPrintのための登録方法を引っ張ってきてそれが印刷される。

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プリンタコードなどが書いてあるのでWebページにゴーだ。
て、俺今もしかして見方によってはプリンタでインターネットしたことになるんだろうか。すごい時代だ。


いんさつ

高速モードでA4資料が一分三十枚と謳われているので試してみる。



前半が高速、後半が高画質
印刷したのは写真のついたワード書類だが、たしかに高速モードなら2~3秒といったところだ。

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画質。左が高速右が高画質。
アップして見ていただけると分かる通り、高速だと写真の画質はさすがにアラだらけ。だが文字などはほとんど差異がない。この速さは魅力的だし使い分けに意義がある差である。ゼロの使い魔は読んだことないです。



試供品で写真用紙(HPフォトアドバンス)が付いているので13秒を謳う高速写真プリントをしてみる。まあ中身は写真じゃないけど。
L版印刷が確かに13~15秒。スゴい。凄いがしかし画質は苦笑い。

さらにお待ちかねのAirPrintを試してみる

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iPhoneの写真メニューから「プリント」を行う。被写体は春先に撮った気の早いシータテハ(多分)
ちなみにいつからiPhoneでこんな被写界深度の浅い写真が撮れるようになったのかと驚いた一部のマニアに念のため言っておくけど、写真はD40で撮ったのをiPhoneに取り込んだものです。

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AirPrint!設定できる項目は枚数のみとストイックである。Webページとか書類だと範囲や両面印刷の設定もできるらしい。ちなみにiPhoneからだとドライバとかインストールは不要。プリンタ検出もWiFiネットワーク上にあればさっと検出。Appleらしい単純さでいい。

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出力。紙の大きさすら選ばなかったがちゃんとL版にフチなし印刷された。というよりもA4の紙に試し印刷しても出るのは無条件でL版サイズ固定のよう。まあこれはこれでわかりやすくて悪くない。

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思ったよりはるかにまともな画質。用途と値段(例えHPの直売価格でも)考えたら何一つ不満なしである。いやほんとびっくりするくらいフツーに写真。深みだ発色の妙だを云々しなければ、粒子感や横線や滲みとは無縁。まあ最近のプリンタなら普及機でもこれくらい当たり前かしら。それでも3800円から出力されたとはにわかに信じがたいレベルではある。

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先ほどの高速印刷で少し触れたが拾ってきた二次絵も出力してみる。
高速13秒だとそれなりの画質だが、高画質印刷にするとすこぶる良好である。
あんま同意を得られないが、フォトプリンタでちゃんとした用紙使って、描きこみの多いお気に入りの二次絵を出力するのはなかなかに素敵なものですぞ。L版だと手頃なサイズでなおよろしい。

ちなみに買ったばかりでトラブルなどもないが、Webを見るに無線LAN周りのトラブル(設定が消えるなど)などは多い模様。
何度も言うけどこの世のPCトラブルの3割は無線LANのせいだと思っている。まあそれはともかく。
ただ完全ブチ壊れたとかそういうのはあまり聞かないので、いざとなったらUSB。


さてそんな3800円プリンタ。B110a

しばらく本格的なプリンタを自分で所有してなかったんでなんか隔世の感あります。ネットワークプリンタは会社で使ってるけど、それが我が家に来るとなると素晴らしく良いものですな。
AirPrintも使うビジョンが見えてなかったけど、ここまでシームレスに「携帯の画面を紙で出す」という行為ができるのはそれだけで活用方法が自分から湧いてくるレベル。と思う。今はそれほどでもない。
試してないけどインターネットプリントも同じく、「そのうち活用する方法は勝手に出てくるはず」と予感。とりあえず友人のプリンタのアドレスを記録しておいて、テレビ見てたら突然プリンターが動作して、今やってる番組に出てる俳優のコラ画像が出力されるとか嫌がらせに近いギャグは出来る。やらねーよ。

そもそもご家庭でプリンタというものの需要が写真以外では減退して久しいが、特に日常的に使わなくてもあればあったで便利なのは間違いない。
価格を含めて、これはそういうところに収まってくれる非常に良いプロダクトだと思う。

とかくなにより3800円だ。理由など説明する前に「まあ、買えよ」でおしまいでよい。というか買うんだ。今すぐ買うんだ。特にiPhoneユーザー。AirPrint試して悦るチャンスだぞ。


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ちなみに「この値段ならもしやインクがついていないのではないか」などと思ったが言うまでもなく杞憂に終わった。
このインク(HP178)が4種パック単体で3200円なので、単純計算するとプリンタは600円だということになる。
いかん、くらくらしてきた。あまりの価格破壊っぷりもだが、「インクが全て切れたら本体価格と同程度を払ってインク交換」という戦慄すべき現実にだ。本体ごと買い換えたほうが早い気すらしてくる。完全にタイトル通り「プリンタ付きインク」だ。

ヒューレット・パッカード  HP178 4色マルチパック CR281AA
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まあプリンタを実際使っていれば言うまでもないことだが、インク使用には偏りがあり、各色は800円程度。4つまるごとを毎回変えなければいけないわけではない。昔はそのような「各色一つでも切れたら全交換」という恐怖のプリンタもあったものだが、流石に今時それはない。

ちなみにカートリッジは増量版(XL)もあり、使用頻度が高ければ各色切れ次第こっちに変えていけばよいと思われる。使用頻度が微妙な場合、インクをほったらかすことによる悪影響が大きいのでオススメしない。
ほかにも安価な再生品やさらに安価な怪しいサードパーティ品もあるので、インクが切れるたびにプリンタが届くような事態にはならないはずだ。


HP178PK ヒューレット・パッカード 詰替えインク 5色パック 送料無料
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怪しいサード品。カートリッジにインクを詰め替えるセット。元が使い捨て前提なのでなかなか力技だ。



ヒューレット・パッカード HP178XL 5色セット 【増量】【互換インクカートリッジ】【ICチップなし(ICチップ要取付)】HP HP178XL-5CL-SET【インク】
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と思ったらもっと力技があった。純正カートリッジからチップを剥ぎとって貼って使ってねというおそろしいモノ。
インク商法が強烈になればなるほど、互換インク業界が面白くなる。禁酒法とマフィアのごとく。

言うまでもなくサード品の多くは保証外以前に中身のインクが粗悪品というのが普通です。ご利用は計画的に。
まあ壊れたからと言って、「じゃ次から純正品を使おう」と思うったら直すより買い換えたほうが早くて安い狂気の沙汰だし、人柱なノリで怪しい物使ってもいいと思うよ。


完全蛇足だけど、よく批判されるインク商法は個人的には何がそんなに悪いのかよくわからん。そんなに大量に印刷するわけでもないだろうし。数千枚単位を日常的に印刷するなら、まず家庭用インクジェットに頼っている場合ではない。
長く使いすぎてあまりに本体価格で元がとれなくなりそうなら、さっさと買い換えれば良いんです。元来プリンタはインクが無限にあったとしても消耗品と言って差し支えない機械。
だから今のプリンタとインクの値段バランスって悪くないところに落ち着いてると思います。流石にプリンタとインクが同じ3000円台は間違ってる気しかしないけど。
怪しい代替品だってあるんだからそこまで批判されるべき状態には見えないと思う。

ケータイだってそうだったでしょ。インセンティブと通信料への機種代負担が許せないとか言って変えさせたけど、結局世の中の感想は「携帯の新機種は高くなった」で終わっちゃった。プリンタもそれと同じ道を辿らせたいのかね。「インク100円だけど本体は素のA4モノクロが5万円からね」とか言われて得する人はそうそういないと思います。

あと多分プリント一枚あたりの値段なんかタダ同然であるべきという勘違い意識もあるんだろうなーと邪推。プリンタを写真や年賀状の無料複製機と思ってる。写真や印刷物って思ってるより原価高いんですよ。意外と。インクだってコーラや食紅垂らした水じゃないんだから。

そんな蛇足の垂れ流し。いや何より私としてはもうインク買わなくても、3800円でスキャナ買えたって時点で割と満足だったりするんで。ええ。




ところで箱眺めてたらスミにこういうものが書いてあって

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Pre3じゃん…

返せよ…WebOSへの夢を返せよHP…
プリンタに積むって言ってたじゃん…WebOSをスマホでもPCのインスタント起動でも展開するって言ってたじゃん…
うう…
うわああああああん


もしかしてコンシューマ向けプリンタ事業も畳んじゃうのかしら。以前PC事業と統合してなかったっけ。うーん。後継機やサポート切れちゃうのはなんだかヤだなー。
WebOS積んだプリンタとかはどうでもいいんだけど、前述のとおり無線LANとかネットワーク機能とか、格安機でもフツーに載せてるのってHPくらいなのよね。HPのこの便利さを知ってしまうと他社はあまりにそういう方面がおろそかな気がする。エントリーモデルにこそこの便利さは必要だと思うんだけど。
割と気に入ったので今後もHPプリンタには注目、と思ってたんだけど、ねえ、うーん。
HPのPC事業がどこに里子に出されるかに我が家のプリンタ事情がかかっている。こんなことになるとは思いもよらなかった。

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人気ゆえ品薄。ただほかのとこでも4000円ちょっとで売っててそれでもやっぱり破格である。